“葬儀鉄”をガッカリさせた北海道「札沼線」のラストラン コロナ禍でJRの深刻な懸念とは
最初は協力関係だったのに……
北海道新聞(電子版)は4月17日、「札沼線、突然のラストラン 町民ら別れ惜しむ 北海道医療大学―新十津川」の記事を配信した。YAHOO!ニュースのトピックスにも掲載されたため、記憶に残っている方もおられるだろう。記事を引用させていただく。
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《JR北海道は17日午前、5月7日廃止予定のJR札沼線北海道医療大学―新十津川間(47・6キロ)で列車の最終運行を行った。16日に政府が新型コロナウイルス感染拡大防止のために北海道も緊急事態宣言の対象地域としたことを受け、27日に予定されていた最終運行が前倒しされた》
札沼線と書いて「さっしょうせん」と読む。それ以外の註釈は必要ないだろう。新型コロナウイルスが我々にどんな影響を与えているのか、具体例を示した記事とも言える。
配信した北海道新聞も、トピックスに掲載したYAHOO!ニュースも、コロナ禍を象徴するという意識は強かったに違いない。
ところが、さる関係者は「ラストランが前倒しされた原因は、新型コロナ問題であるのは事実ですが、より正確に言えば、熱狂的な鉄道オタク対策という側面があったのです」と明かす。
札沼線は、札幌市の桑園駅から新十津川町の新十津川駅までを結んでいた。桑園駅から当別町の北海道医療大学駅までは通勤・通学客が多く、現在でも運行は続いている。
ところが北海道医療大学駅から終点の新十津川駅までの区間では、過疎化の進行などもあって乗客が激減していた。そして2016年、JR北海道は「維持困難な13区間」の1つとして発表した。
「当時の札沼線は、終電が日本一早いことで知られていました。16年春のダイヤ改正で、北海道医療大学駅から新十津川駅の区間は、それまでの1日3往復から1往復に減ったのです。これにより、朝に桑園駅を出た列車は新十津川駅に午前9時28分に到着。折り返しで午前10時に終電が発車するようになりました。これが話題を呼び、鉄オタが札沼線を目指すようになったのです」(同・関係者)
結局、地域住民も廃止を受け入れ、JR北海道は18年12月、「20年5月7日を廃止日」にすると国土交通相に届け出た。この「5月7日」という廃止日は異例のことだったという。
「JR各社は旧国鉄のお役所体質を今でも引き継いでいるところがあります。廃止日なら年度末の3月が基本です。そのため、札沼線の5月7日という日付は非常に珍しいのです。JR北海道があえて“慣例”に逆らったのは、ゴールデンウィーク(GW)の最終日に廃止することで、全国から鉄オタに来てもらうことを狙ったからです」(同)
JR北海道は臨時列車の運行を決め、地元も様々なイベントなどを準備した。この時までは鉄オタを排除するどころか、「一緒に盛り上がろう」と協力ムードが圧倒的だった。一例をご紹介しよう。
毎日新聞は今年2月5日、地元版の紙面に「JR札沼線:札沼線、夜間運行4年ぶり 最後の雪景色楽しむ」の記事を掲載した(註:引用文は半角数字の使用など、デイリー新潮の表記法に改めた)。
《5月7日に区間の半分以上が廃線となるJR札沼線の駅舎をランタンなどで彩るイベント「エキアカリ」が1日に開かれ、列車が4年ぶりに夜間運行した=写真。終着の新十津川駅では「ラストランまであと95日」と駅舎ボードに書かれ、沿線自治体の地域おこし隊の有志がちゃんこ鍋などを振る舞い、鉄道ファンら約120人の乗客を温かく出迎えた》
だが、新型コロナの感染拡大で、一気に流れは変わってしまう。
「JR北海道は4月3日、GW中は多くの鉄オタが乗車するとし、『新型コロナの感染リスクを減少させるため、全席を指定席にする』と発表しました。ところが、かえって鉄オタは盛り上がってしまいます。何しろディーゼル気動車が1両だけ走っているような区間です。そんな列車の指定席など前代未聞でしょう。『絶対に乗りたい』という鉄オタが増えてしまったのです」(同)
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