ホークス「千賀滉大」に嫌な予感… “悲運のエース”を思い出す苦しい道

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 いまやソフトバンクの、いや、日本球界を代表する大エースに大きく飛躍を遂げた千賀滉大だが、今年は出だしから躓いている。

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 春季キャンプの初日から右ふくらはぎの張りで別メニュー調整。その箇所は1月の自主トレ時から違和感を覚えていた部分であり、その影響からか、キャンプ終盤には右前腕部にも張りが出てしまった。その結果、千賀はノースロー調整を強いられるなど大きく出遅れ、2年連続で務めていた開幕投手の座を譲ることになりそうだ。

 入団時から千賀を見てきたホークスOBの野球解説者・池田親興氏は、「チームのエースとして、多少無理をしても投げていたはずです。また、160キロを投げるための全身の筋力バランスも崩れていたのだと思います」と語り、大黒柱としての責務が負担になっていた可能性を指摘する。

 振り返れば、“予兆”はあった。昨シーズンは故障らしい故障もなく先発ローテを守り、26試合登板でパ・リーグ2位の13勝、同トップの227奪三振を記録してリーグ制覇に尽力。日本シリーズでは開幕投手を務めて白星を飾るなど、3年連続日本一の偉業に貢献したが、シーズンオフに開催された世界野球「プレミア12」は右肩の違和感で辞退した。このシーズン、千賀は自己最多となる180回1/3を投げていたため、勤続疲労と見られている。

 また、千賀はかねてよりメジャー挑戦の希望を公言しているが、それが精神面・身体面に一層の負担をかける一因になっていたのではないかと、前出の池田氏はみている。

「球団がこれまでポスティングでのメジャー挑戦を認めていないからこそ、文句のない活躍が必要だと考えているんじゃないでしょうか。『千賀を行かせてやろう』と周囲に思ってもらいたい。だから、自身に勝敗が付かなくても、長い回を黙々と投げているのではないか。以前は自分から先頭に立って、という感じではなかったが、今は『自分がやらなければ』というエースの風格が出てきています」

 そこで懸念されるのは、偉大な先人が歩んだ苦しい道を千賀も進んでしまわないかということだ。ホークスの大エースと言えば、斉藤和巳の名が思い出されるが、NPB史上7人目の投手5冠、2度の沢村賞に輝いた名投手はケガに泣かされて現役引退を余儀なくされた。

 斉藤は2007年から長いケガとの戦いを強いられることになったが、前年には自己最多の201回を投げ、18勝を挙げて最多勝に輝いた。そして、オフには出場予定だった日米野球を右肩の炎症で辞退していた。千賀と斉藤、2人の置かれた状況が似ていることが今後の不安を一層募らせる。

 千賀本人としたら一刻も早く本来のコンディションを取り戻したいはずだ。だが、焦りは禁物であり、その必要もない。不幸中の幸いと言っていいのか難しいが、新型コロナウイルスの感染拡大により開幕のスケジュールさえまったく見通しの立たない状況は、結果として、千賀に“時間的猶予”を与える形となっている。

「もちろん良いことではないですけど、開幕が延期になったことで千賀にも時間ができます。彼は練習熱心な投手だから、これまで以上にスケールアップできるはず。完全復帰するまでは他の投手に任せ、まずは自分自身のことに集中すること」(前出の池田氏)

 ソフトバンクが3年ぶりのリーグ制覇、そして4年連続の日本一を実現させるためには、エースの奮闘が不可欠だ。今は復活に向けて一つ一つ積み上げていく時期……来たる時にその実力でマウンドを支配するために、それは必要なのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月1日掲載

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