250戸所有のカリスマオーナーの告白 「私はこうして家賃滞納を回避しています」

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スーパー銭湯のチケットを

 さらに村瀬さんは、従兄弟の娘さんが経営するパン屋と連携し、売れ残りを安く仕入れ、マンション入居者には無料で配布するサービスも計画中だ。所有するマンションは、3分の1がファミリーマンションで、入居者同士のコミュニティが醸成されている。以前、給湯器の故障でお風呂が使用できなくなった時、スーパー銭湯のチケットを配ったことがあった。それからというもの「家族ぐるみで裸の付き合いできた」と入居者同士の交流が盛んになったのだ。パンは、マンションのまとめ役のような人に頼んで配る予定だ。

「この仕組みを使えば食料品の共同購入もできるかもしれません」  
村瀬さんは常々、賃貸マンションのスケールを活用したサービスができないと考えてきた。

「共同住宅にはたくさんの入居者がいますから、数の力を使ってできることがあると思うんです。例えば、マンション全員が家族のような扱いで『携帯利用料家族大幅値引き』とか、各部屋が支払っている上下水道、ガス・電気等々の基本料金おまとめプランとか」

 合言葉は、「入居者さんの財布は軽く、オーナーの通帳には安定を」だ。

「とはいえ、我々オーナーも来年、再来年のことまではわかりません。家賃減額や滞納が続けば経営が立ち行かなくなる人も出てくるでしょう。ですから、コロナが原因の滞納の場合は、その未収金分について、利益が出ている期中に損金として計上できるようにしてもらいたいです。入居者さんの給料明細があれば証拠になるはず。そういった税制面での優遇がないと、オーナーだって辛い」

領収書の要らない経費を認めて

 通常、滞納による未収金は損金とみなされず、売り上げとして計上される。オーナーはその分の税金を支払っている。せめてこの1~2年は、オーナー側にもコロナ特別措置があれば、入居者向けにサービスをする余裕も生まれる、というのが村瀬さんの考えだ。

「感染された入居者様にオーナーからお見舞金として50万円を支払います。ですから、国会議員のみなさんのように、月100万円の領収書の要らない経費を認めて欲しい。先生方と違い歌舞伎町での遊興費には使いませんから……」

 日に日に深刻化する現状はまさに非常事態。入居者も大変だが、家賃を払ってほしいと訴えるオーナーも、滞納家賃を請求する保証会社も皆、危険にさらされながら、かつ前例のない中で仕事をしている。村瀬さんのようなオーナーは大家の鑑と言えるが、保証会社も入居者支援に奔走している。

 ある保証会社の幹部は、「滞納した方に、ただ払って、出て行ってと言うのはナンセンス、モラル違反です。お一人ずつの状況を把握して、住宅確保給付金や緊急小口融資の斡旋をし、伴走しながら分割で正常化させる必要があります。そうすれば、家を失う人を少なくできると思います」と語っていた。

 相田みつをさんの詩に「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」とある。家賃の現場では立場を超えた助け合いが始まっている。

吉松こころ(Hello News)
鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。週刊全国賃貸住宅新聞に勤務し、営業デスク、取締役を経て、2015年に独立。不動産業界で起きていることを配信する、株式会社Hello Newsを立ち上げ、不動産・建築業界で生きる人々を取材している。Webメディア「週刊ハローニュース」は毎週木曜更新。上京して22年間で引っ越した回数は18回。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月1日掲載

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