クルーズ船112人治療で「院内感染」ゼロ!「自衛隊中央病院」はなぜ奇跡を起こせたのか

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CT検査の苦労

 PCR検査の精度について、田村チーム長の言葉は注目に値する。

「退院するためには、時間をおいて2回検査することになっています。1回目は陰性であるにもかかわらず、2回目が陽性になる症例を数多く経験しました。明確な検討はできていないまでも、感覚的には70%程度の感度ではないかと思われました」

 この「70%程度」という数字だが、やはり感染者治療に当たった国立国際医療研究センターの医師も、あるメディアでそう述べていた。感度とは陽性を拾う指標で、「70%」だとこうなる。

 ダイヤモンド・プリンセス号での感染率を元に、ここでは単に3700人の集団をPCR検査するとして、20%つまり740人の感染者が潜んでいると仮定する。感度が70%だった場合、740×0・7=518人が陽性と出る。残りの222人は陰性となるが、これは偽陰性者で実際は陽性の感染者だ。この人たちは、「陰性者」として街に出て感染を拡げる可能性が高いのだ。

 田村氏の話から、私はPCR検査だけではなく、CT検査を併用するのが確実に精度を高める方法であり、より多くの患者の命を重篤な肺炎から守る手立てになると思う。

 CT検査の裏ではこんな苦労があった。

「当院には感染者専用のCTはありません。一般患者ら多くの人が使うCTをコロナ感染者にも使いました。それに当たっては、時間をずらしたり、患者たちが接近せず距離を保てるように努めたりしました。機器使用後は換気や消毒液による拭き掃除も徹底しました。また、医師や看護師のみならず、撮影に当たる放射線技師も防護装備が必要で、患者が入れ替わる度に着替えるなど手間をかけ気を使ったのです」

 感染者のウイルスに他者を曝露させまいという緊張感が窺える。

 クルーズ船の感染者は104人いたが、実に16の国と地域に分かれており、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアなどにわたっていた。言語の異なる患者とコミュニケーションを取りつつ各国の駐日大使館へ連絡、病状の説明を行った。それには相当数の通訳が必要なため、全国の自衛隊部隊に通訳要請で支援を仰いだ。

 また、入院時、軽症者が多かったこともあり、自ら母国語で連絡を取りたいとの要望が出て、WiFiルーターを設置したりもした。

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