似鳥昭雄(ニトリホールディングス会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】
運を呼び込む
似鳥 私の場合、接客はできなかったけれど、結婚して家内が家具を売ってくれたから、配達や仕入れに専念すればよかったんです。
佐藤 いい分業体制でしたね。
似鳥 ええ。そこで、何が売れて何が売れなかったかに興味を持ちました。私は100のうち99は欠点ですが、たまたま商品の仕入れに興味を持ったことがよかった。それで会社が成長した。運がよかったんですね。
佐藤 運も実力のうちです。
似鳥 いやいや、整理整頓もできないし、物事が終われば、それを覚えていることもできないんですよ。
佐藤 余計なことを覚えていてもいいことないですよ。
似鳥 ああ、だから失敗しても悩みは少ないかもしれない(笑)。ただ、いま振り返っても、ほんとに運がよかったと思いますね。
佐藤 そう言えるのは実力があるからです。実力のある人ほど、運のよさを強調します。そういう人のいいところは、他者にやさしくなれることですよ。特に失敗した人に対して。
似鳥 それはそうかもしれない。
佐藤 これは官僚に多いのですが、自分の努力で地位を得てきた人は、うまくいかない人を努力不足だと見下すんです。世の中、いろんな巡り合わせがあることがわからない。だから努力家というのは、謙虚に見えて、実は怖い人だというのが私の経験則です。
似鳥 そういう人は、自分には持って生まれた高い知能があるから、とは思わないのですか。
佐藤 思う人もいるでしょうね。
似鳥 やっぱり頭のいい家系とか成功する家系に生まれた人は、能力が備わっているケースが多い気がします。
佐藤 似鳥さんのご母堂がすごい人だったんですよね。
似鳥 戦後、ヤミ米屋をやって育ててくれました。斜め前には警察の官舎もあったので、何度も捕まったのですが、私が大学を卒業するまでそれで稼いでくれた。父は、土木の会社をやっていましたが、会社が赤字で家には収入がなく、母のヤミ米で食べていたので、父と母は朝から晩まで喧嘩していましたね。
佐藤 豪快なお母さまですね。
似鳥 母は読み書きもできないのですが、とにかく積極的で度胸があった。いつも前を向いて進もうとしていました。私は前に向かう、攻めていくという部分を受け継いだと思います。そして前を向いている限りは、運もついてくる。
佐藤 ニトリの経営には、それが息づいていますね。
似鳥 そうですね。
佐藤 いまコロナウイルスで世界中がたいへんな状態です。
似鳥 今回のコロナウイルス感染拡大は、世界が今まで体験したことのない未曾有の危機と認識しています。罹患された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
佐藤 景気減速も激しいです。こういう時には、どう対処すればいいんでしょうか。
似鳥 こんな時こそ、時間の使い方を工夫すべきです。取り組むべき改善・改革を推し進めるチャンスなのです。みんなが同じように悪い状態ですから、やり方、方法を考えることで、逆にプラスに転じることもできると思います。
佐藤 その発想がいいですね。
似鳥 今年はそもそも消費税増税後です。オリンピックの延期も決定しました。でも不景気だって、考えようによっては、悪くない。景気が悪くなったら、土地の値段は下がり、建物も安く建てられます。だから私は、景気がいい時には可能な規模の4割程度の投資におさえ、悪くなりだしたら、2~3倍の大きな投資をする。こうすることで安いコストで投資ができ、再び景気回復期になれば利益を享受できる、筋肉質な財務体質を作れます。
佐藤 なるほど、そう考えるんですね。
似鳥 50年、そうやってきました。それにいまは人手不足ですが、不景気ならどんどん余ってきますよ。そうしたら、いい人材が採用できるようになるし、スカウトもしやすくなる。いまの白井俊之社長は、第2次オイルショックの1979年に、36名採った大卒のうちの一人です。当時は社員60名ほどで、36名の大量採用でしたから月給を払うのもやっとでした。でもそこに優秀な人がいた。
佐藤 ピンチはチャンスですね。
似鳥 その通りです。ピンチの時こそ、他とは違ったやり方を編み出し、逆にシェアをとっていく。ともかく前を見る。前向きにいくことが大事ですよ。
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