似鳥昭雄(ニトリホールディングス会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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 北海道で一軒の家具店から始まったニトリは、いかにして成長を続け、年間売上6500億円近い巨大企業となったのか。「100倍発想」「店舗年齢論」「30年計画」など、型破りの経営には、確固たるポリシーがあった。景気後退にも、緊急事態宣言にも負けないニトリ流「逆転の発想」。

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佐藤 ニトリはユニクロと並んで、平成の30年間にその業績を著しく伸長させた数少ない会社の一つです。1987年から連続増収増益というのは、すごいことですね。

似鳥 ありがとうございます。

佐藤 経営的な失敗はまったくないのではありませんか。

似鳥 いやいや、そんなことはありませんよ。失敗は山のようにあります。

佐藤 でも長いスパンではいつでも成功されている。

似鳥 最終的にはね。

佐藤 最終的な成功に向けて、そのプロセスが非常にうまく組み立てられているように見えます。

似鳥 まずは「やろう」と実行することです。実行して、いろいろ失敗して、乗り越えようとすれば、こうしたらいいということが出てくる。

佐藤 いま小売業で勝ち残っているのは、商品企画から製造販売まで手掛けるSPA(製造小売)だと、よく言われます。ニトリはそれに物流まで加えています。

似鳥 物流や商社機能まで自社でやっているのは、世界中でニトリだけだと思います。結果的にそうなったわけですが、私が考えているのは、まず「安く」です。より安くするために、問屋を通さずにメーカーから直接商品を仕入れることにしました。北海道、本州と安く仕入れられるメーカーを探す中、1985年のプラザ合意による円高を契機に、海外商品の直輸入を開始しました。今度はそれを運ぶのに「安く」を追求していったら、商社や船会社に頼むより自分でやる方が安く、利益が出るとわかった。それで商品企画から物流まで手掛けることになったんです。

佐藤 普通はそんなにうまくはいかないものでしょう。

似鳥 やったことがない分野ですから、最初はたくさん失敗をします。損害も出ますが、やっているうちに業者並みにできるようになってくる。また私たちは家具のことしか知りませんから、その業界の常識にとらわれない発想や改善、改革ができます。すると専門業者よりもコストが下がったり、革新的なことがどんどんできるようになります。

佐藤 なるほど。だから似鳥さんは非常に独創的な発想で経営をされているんですね。店舗作りでも、店舗年齢という発想で、平均7年ほどに保つようにされている。

似鳥 お店って開店して5年間は伸びていくものです。6年から10年の間はほぼ横ばいで、その後は下降線を描き出します。よくイヌの歳を、人間の年齢を7倍にしたものと言うでしょう。店舗は4倍なんです。4を掛けるとちょうどいい。店舗年齢が7年なら28歳だから、最高の時期ですよ。9年だと36歳でまだまだ元気。でも10年、15年経つと体の衰えが目立ってくる。

佐藤 一般的には、一所に何十年とある店が多いですよね。

似鳥 大手は平均して20~30年くらいでしょうか。でも街は5年、10年経てば、人口移動や構成も社会インフラも変わってきます。だから顧客を集めやすい場所に店を移して、リセットする必要があるんです。

佐藤 場所も変えるのですね。

似鳥 同じ場所でただ改装しただけではダメです。人口は毎日、少しずつ動いています。しかも道や橋、鉄道などの交通インフラも変わってきますから、店からの同心円で考えてはいけない。アメーバ状になる。駅前でガラガラのお店があるのは、お客さんがどこにいて、どう動いているかを調べていないからです。そこをきちんと押さえないといけない。

佐藤 細かく調査されているわけですね。

似鳥 出店関係部門には、100名くらいの従業員がいます。不動産業者を使わず、全国の行政人口5万人以上の都市を、独自に人口から道路計画まで調べ、出店候補地を絞り込みます。地元の業者はその動きを知りませんから、いい場所を早く、安く、手に入れることができる。これもコストを下げるには必要なことです。

佐藤 ニトリという企業体の中で、いつも起業が行われている感じですね。ほぼ5年と考えれば、常に2割の会社が退場して、2割の会社が生まれていく。とても面白い。

似鳥 一般に利益率5%なら収益のいい店舗ですが、ニトリは5%以下になると赤信号なんですよ。早め早めにスクラップ・アンド・ビルドしていくのです。

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