「コロナ退治でスクラム組もう」… 唐突に日本にすり寄る韓国人の底意
「毒まんじゅう」の米韓スワップ
――韓国は米国から為替スワップを付けてもらいました。
鈴置:あれは韓国にとって「毒まんじゅう」です。3月19日、米FRB(連邦準備理事会)が韓国を含む9か国の中央銀行と為替スワップ協定を結ぶと発表しました(「新型肺炎発の韓国の通貨危機 米国の助けも不発で日本にスワップ要求…23年前のデジャブ」参照)。
これは「為替」スワップであって「通貨」スワップのように市場防衛に――ウォン売りに直接、対処できる仕組みではありません。
もっと大きな問題は6か月間の期限があることです。今年9月までに韓国の潜在的なドル不足が解消する保証はない。米国は、為替スワップは延長しないぞ――金融システムの「つっかえ棒」を外すぞ、と韓国を脅せるようになったのです。
なお、4月26日時点で、韓国は米国から与えられた為替スワップ枠600億ドルのうち、27%弱の161・9億ドル分を行使済みです(「新宿会計士の政治経済評論・米韓為替スワップ:本当の危機は『コロナ後』に到来か」参照)。
――米韓関係はかなり険悪です。
鈴置:防衛分担金を巡り、トランプ(Donald Trump)大統領と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が鋭く対立しています。下手すると「米国の要求額には応じない。在韓米軍は出ていけ」と韓国側が言いだすかもしれない(「文在寅で進む韓国の『ベネズエラ化』、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”」参照)。
1997年のアジア通貨危機の際、米国がドルを貸すなどの救済策を韓国に施さなかったのは、両国が深く対立していたからです(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。
1992年、韓国は中国と国交を樹立すると、米国の軍事情報をひそかに渡し始めました。これに怒った米国は、韓国の通貨危機を利用し「お仕置き」したのです。今、当時の状況と酷似してきました。
雇用大乱が呼ぶ金融危機
――米国とのスワップは頼りにならない。日本とスワップを結ぶしかない、ということですね。
鈴置:その通りです。それに今回の危機は単なるドル不足に留まらない、と警戒する人も出てきました。経済学者で今期まで国会議員(比例区)を務めたチェ・ウンヨル氏です。
「共に民主党」所属ですが、左派の暴走のブレーキ役とも言われた議員です。「アプリを使ったタクシー配車を禁止する法案」に同党の国会議員でただ1人、反対しました。労働組合に気を使って技術革新をないがしろにする左派に抵抗したのです。
韓国経済新聞のインタビュー「チェ・ウンヨル、『与党、今や言い訳はできない…経済生き残りに無限の責任を感じよ』」(4月17日、韓国語版)を訳します。
・チェ・ウンヨル議員はインタビューが始まるや、A4用紙に鉛筆で「消費の崖―売上高の減少―黒字倒産―雇用の消滅―金融危機」と書いた。そして「新型肺炎が経済にもたらす危険の経路」と説明した。
「消費が激減すれば、企業の売上高が減り、倒産が多発、雇用が悪化する」のはどの国も同じです。ただ、「雇用の消滅」が「金融危機」を呼ぶ点が韓国独特の問題です。
韓国の家計の負債比率は高い。金融機関からおカネを借りて不動産投機するサラリーマンが極めて多いからです。
彼らが職を失えば、金融機関の不良債権は一気に増えます。倒産多発と相まって、韓国の金融システムは大いに毀損されるのです。金融論が専門のチェ・ウンヨル議員は「与党大勝」と浮かれる左派政権に、新聞を通じて警告を発したかったのでしょう。
実際、韓国語で言う「雇用大乱」が始まりました。韓国の統計庁が発表した「2020年3月の雇用動向」によると、3月の就業者は前年同月比19万5000人減りました。世界金融危機当時の2009年5月の24万人減に次ぐ数字です。
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