「コロナ退治でスクラム組もう」… 唐突に日本にすり寄る韓国人の底意
「新型肺炎の防疫に失敗した」と日本を見下していた韓国人が、突然「スクラムを組んで共にコロナと闘おう」と言い出した。その狙いを韓国観察者の鈴置高史氏が読む。
日本の感染拡大は韓国のチャンス
鈴置:「日本が新型肺炎で混乱するのに乗じ、世界市場を奪おう」と韓国紙が主張しました。書いたのは中央日報のナム・ジョンホ論説委員。記事の見出しは「『コロナ19』とはチャンス」(3月31日、韓国語版)です。
ナム・ジョンホ論説委員はまず、新型コロナウイルスによる肺炎の世界的な流行で、国際的な関係が様変わりすると強調。
「防疫に失敗して威信が墜落する米国」と、「防疫ノウハウの提供を通じ世界をリードする中国」を例にあげました。そのうえで韓国にもチャンスが訪れた、と快哉を叫んだのです。翻訳します。
・このようにしてコロナにより、深手を負う国と軽い傷で終わる国が生まれ、国際秩序が変動しうる。例えば、「感染が拡大すれば2週間で感染者数が30倍以上になる」との安倍晋三総理の警告が現実となれば、日本は大きな混乱に陥る。
・ことに地域社会の感染をちゃんと防ぐのに失敗すれば、事態が長期化する公算が大きい。輸出品目が数多く重なる韓国が、反射的な利益を得ることが可能ということである。
「日韓逆転」は4月19日
――「日本よ、深手を負え。そうなればこっちが上だ」ということですね。
鈴置:韓国人の本音がよく表れた記事です。韓国の1日当たりの新規感染者は2月29日に813人を記録した後、徐々に収束しました。4月2日には100人を下回り、4月末現在は10人前後に減っています。死者数はずっと1桁を維持してきました。
一方、日本は3月下旬から新規感染者・死者ともに急増。日韓の累積感染者・死者数が同時に逆転したのは4月19日でした。
韓国紙には3月末ごろから「防疫に失敗した日本」を上から目線で報じる記事が登場し、今や定番になりました。「日本経済へのダメージは大きい。1人当たりGDPで追い越すチャンス」などと期待する声もネットにはあふれます。
東日本大震災でも「チャンスだ!」
――「コロナによる日本の没落」が待ち遠しい……。
鈴置:新型肺炎だけではありません。2011年の東日本大震災の時も「日本を追い越すチャンスだ!」と韓国紙は国民に呼びかけました。
朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)産業部次長(当時)が書いた「機会を捕まえる国、逃す国」(2011年5月24日、韓国語版)を訳します。
・辛格浩(シン・ギョクホ、日本名=重光武雄)ロッテ会長は東日本大震災の直後、日本と韓国を「唇滅びれば歯寒し」の関係に例えたという。日本が痛みを感じれば韓国も痛い、ということだ。
・もちろんそうした関係も少なくない。だが、少なくとも韓国を食べさせ生き延びさせている製造業の分野では今、日本を越える高みにあと一歩と近づいたことは明らかだ。隣国の悲劇を喜ぶのはよろしくはないが、機会を逃すのも愚かなことだ。
・日本は朝鮮戦争で得た利益を元手に神武景気と呼ぶ爆発的な成長を実現した。日本はこの時、強国の地位に再び登った。冷酷な歴史だが、経済は冷静なゲームだ。韓国は偶然やってきたチャンスをどのように生かし、どれだけ維持できるのか。
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