あざといほどベタな「M 愛すべき人がいて」 視聴者参加を促す「未完成」の成功法則

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 テレビに向かって話しかける人は、今どれくらいいるのだろう。昔よくおじいちゃんおばあちゃんがやっていた、クイズ番組やプロ野球の采配につい言葉が出てしまう、アレである。最近では、あまり見かけない光景ではないだろうか。

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 しかし令和になって、再びテレビに向かって思わず話しかけたくなる、もといツッコミたくなる番組が現れた。それが「M 愛すべき人がいて」である。浜崎あゆみの自伝的小説を下敷きに、オリジナル要素を加えたシンデレララブストーリードラマ。第1話では松浦勝人エイベックス会長がモデルの「マックス・マサ」と、平成の歌姫・「アユ」との初めての出会いが描かれた。

「あの日も海を見ていたな」と、アユ役・安斉かれんの独白で始まった第1話。虚ろな目の先にあるのは、テレワーク中のWEB会議と見まがうような合成チックな海だ。安斉のルックスと鼻声は、確かに本家のあゆっぽい。とはいえ演技にはおぼつかなさがまだまだ残り、再現VTRのような印象を受ける。

 そんなアユの運命を握るマサ役は、三浦翔平が熱演。「ぜってえ負けねえ」「時代を変える奴は俺だあ!」と黒っぽい衣装でやたらと叫ぶ。こちらはLDHの深夜ドラマみたいなノリ。考えてみればLDHの会長を務めるHIROは、松浦会長の盟友。何かインスパイアされるものがあったのかもしれない。

 そして彼につき従うのは、謎の秘書・田中みな実。彼女が着けている眼帯は「みかんの皮」だの「鳩サブレ」だのと大喜利状態だ。なお登場シーンは必ず、プゥワーンとおならみたいな変な効果音が鳴る。これも謎の眼帯から出る周波数なのだろうか。

 さらにその田中の元彼・藤森慎吾の決め台詞「きみかわうぃーねー」を言わされたのは、マサの部下・流川役の白濱亜嵐である。悪ノリに次ぐ悪ノリ、濃いキャラに次ぐ濃いキャラたち。社長室でイグアナを撫でる、派手なネクタイと顔の高嶋政伸。TKこと小室哲哉を彷彿とさせる敏腕プロデューサーは、ぺこぱの松陰寺太勇のような出で立ちで「グッドラック」と捨て台詞を吐く。もしTKが見ていたら、時を戻したいに違いない。ただ劇中でも流れていた、TKが篠原涼子に提供した大ヒット曲「恋しさとせつなさと心強さと」のB面は「GooD Luck」という曲である。芸が細かいと思わずうなってしまった。

 他にもまだらに赤い髪の祖母役・市毛良枝や、唐突に弾き語りを始めるバーテンダーまで、登場人物はどこか不自然なキャラばかり。予想通りSNSはツッコミの嵐だったが、ほとんどは好意的だった。「できの悪い子ほど可愛い」と言う通り、あれこれとダメ出ししがいのあるドラマとして歓迎されたように見える。

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