こんなにある共通点…篠原「ハケンの品格」再放送で確信した米倉「ドクターX」の原点

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ヒロインに共通する独立キャラ

 民放プロデューサーが言う。

「確かに瓜二つですね。危機的な社会を煽り、そこに特別のスキルを持った女性が登場し、物事を解決していくというストーリーも共通しています。もっとも、放送局は違えど、脚本は同じ中園ミホさん(60)ですから、パクりだとか非難されるような謂われはありません。それにしても、よく似ていますよね。“いたしません!”とか……」

 2つのドラマの主人公は、ハケン社員とフリーの外科医という職業こそまったく違うのだが、雇い主に言ってのける“労働条件”もよく似ている。

●ハケン:人材派遣会社ハケンライフの一ツ木(安田顕[46])が朗読。
 契約期間は本日より3ヶ月。勤務時間は月曜から金曜までの9時から、正午より1時間の昼休みを挟んで、午後6時までとする。契約期間の延長は一切いたしません。担当セクション以外の仕事はいたしません。休日出勤、残業はいたしません。

●ドクターX:神原名医紹介所の神原(岸部一徳[73])が説明。
 勤務時間は午前8時から午後5時まで。途中、食事のため、1時間の休憩を入れて、1日8時間労働。それを超える場合は、特別料金になります。時間外労働は1時間3万円、契約外の緊急オペは1件30万。これだけは厳守していただきたい条件がございます。医師免許がなくてもできる仕事は一切いたしません。例えば、論文の下調べ……院長回診、教授回診……学会のお供……ゴルフの送り迎え……愛人の隠蔽工作……。

 と読み上げる中、米倉が「いたしません」を連呼するのだ。

「後に放送された『ドクターX』のほうが、よりドラマチックになっていますね。そして周りの共演者たちの立ち位置も、よく似ています。ハケンを毛嫌いする正社員の大泉洋(47)に当たるのが、大門を“デーモン”と呼んで蔑む勝村政信(56)でしょうか。一方で、彼女たちを慕う若手には『ハケン』ではまだ初々しい小泉孝太郎(41)、『ドクターX(第1シリーズ)』ではまだまだ売れる前の田中圭(35)。そして彼女たちの実力を認める上司には、松方弘樹(1942~2017)と伊東四朗(82)がいます。伊東さんは両方に出演していますが、『ドクターX』では、大門を利用しようとする動きもありますね……」(同)

 いずれもヒロインは、不利な労働条件にもかかわらず、圧倒的なスキルを後ろ盾に、上司にも言いたいことを言える意志の強い女性というのも共通している。

「現在60歳の中園さんは、年齢的に山口百恵(61)の『赤いシリーズ』などの大映ドラマで育った世代です。重々しい定番のナレーションから入って、派手で元気な主題歌に乗ったタイトルロールは、『ハケン』も『ドクターX』にも共通していますが、これらは大映ドラマの『スクール☆ウォーズ』(TBS)ともそっくりです。さらに、『水戸黄門』(TBS)のようなベタでステレオタイプな展開を恥じることなどありません。テレビでは視聴率の取れる番組こそ是であり、取れなければ悪という信念があるのでしょう。『ハケン』の第1シリーズが放送された07年頃は、マンガ原作のドラマばかりで、オリジナル脚本は少なくなっていた。そんな中、彼女は“結果を出すから書かせて”と局に訴え、平均視聴率20・2%、最終回は26・0%という見事な結果を出しました」(同)

 中園さんといえば、松雪泰子(47)の「白鳥麗子でございます」(93年、フジテレビ)、中山美穂(50)の「For You」(95年、フジ)、松嶋菜々子(46)の「やまとなでしこ」(2000年、フジ)、さらに吉高由里子(31)の朝ドラ「花子とアン」(14年、NHK)……女性を描いたヒット作は数知れず。

「主役はその時代のスター、立っているだけで注目を浴びるような人が多いですね。スターシステムをよく分かっています。中山美穂にシングルマザーを演じさせたり、スターの主役に決め台詞を吐かせるわけです。米倉涼子の『私、失敗しないので』はもちろんですが、松嶋菜々子に『借金まみれのハンサムな男と裕福な豚男、どっちが結婚して女を幸せにしてくれると思う?』と言わせ、篠原涼子には『派遣が信じるのは自分と時給だけ』となんだかハードボイルドなセリフが多かった。でも、これらのセリフが視聴者の共感を呼んだのは、“取材の中園”と呼ばれるほど、彼女は実際に派遣社員や医師などに取材を重ねることで、本音を聞き出し、それを脚本にしているからです。インタビューで、いい女とは、『権力にすり寄らず、自分の足で立ち、自分の考えで動く人』と答えたこともありましたね。自身もシングルマザーで、スキルを身につけ、ヒットメーカーとして書き続けてきた彼女ならではの信念かもしれません」(同)

 果たして、13年ぶりとなる新生「ハケン」では、どんな決め台詞が飛び出すだろうか。いや、前回とまったく同じかも。

週刊新潮WEB取材班

2020年4月22日掲載

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