株主総会直前に風雲急! 積水ハウス「会長派vs.前会長派」の多数派工作
「事件のことはタブー」
かつて積水ハウスで営業成績日本一を記録、昨年まで常務執行役員を務めていた藤原元彦氏が話すには、
「事件の真相を解明しないと、社員にもお世話になっている業者さんたちにも、すごいストレスがかかっています。『戦は兵に頼らず勢に求めよ』という孫子の兵法における言葉がありますが、要するに組織では湧き上がるエネルギーが大切。みんなが“やるぞ”と思えるかどうか、ゴールまで走り切れるかは、リーダーシップにかかっている。なのに、社内では事件のことはタブー扱いで一切説明がないんですね」
社内の士気は低下する一方だというのだ。
「むしろ、阿部さんが会長になってからは、会社で『インテグリティ』という、道徳観とか倫理観という意味の言葉が多用されるようになった。まともな社員だったら、どの口が言っているんだとなります。私自身、社外で阿部さんは事件の責任を取るでしょうと口にしたことがあった。それを聞きつけたのか、阿部さんに社長室まで呼び出され、“お前、オレが責任取るのが当然だと言っているらしいな”と問い詰められたこともありました」
そんな体制に嫌気が差して辞表を出すに至ったというが、阿部氏の“強権支配”はこれに止まらない。
積水ハウスのさる中堅社員はこう明かす。
「阿部さんの奥さんは、社員の間で“イメルダ夫人”と囁かれ、やりたい放題でした。夫妻は都内にある積水ハウスのマンションを所有していますが、ある時に部屋の電球が切れた。それで、奥さんからマンション事業部の社員の携帯に電話があり、会議の途中なのに対応させられたこともあったと聞いています」
これらの指摘について阿部会長はどう答えるのか。
都内の高級住宅街にある自宅を訪ねると、インターホン越しに件の夫人が出て、
「(公私混同については)心当たりがありません……」
とだけ述べて切れてしまい、阿部会長の携帯を鳴らしても応答はなかった。
積水ハウス広報部は、
「『地面師事件』は明確な詐欺事件であり、当社は被害者の立場です。当社に起因する不正取引は一切ございません」
ちなみに、全株主の約3割を占める機関投資家に助言する米国のISSと、グラスルイスの大手2社は、阿部会長と稲垣副会長の再任に「反対推奨」、ノーを突き付けている。片や「前会長派」が推す和田氏と勝呂氏の取締役就任はグラスルイス社が「賛成推奨」とした。
今や「助言会社」は、投資家たちの判断を左右する影響力を有している。グループや協力企業の株を抱き込む「会長派」有利とされてきた株主総会の行方は混沌とし、蓋を開けてみなければ分からない。果たして、株主の支持を集めて過半数を制し、“家に帰れる”のはどちらの一派か――。
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