株主総会直前に風雲急! 積水ハウス「会長派vs.前会長派」の多数派工作
FBIからの電話
「内容証明の存在は、当時の阿部社長も知っていたにもかかわらず、むしろ取引を妨害する工作だと決めつけ、契約を2カ月も早める行動に出た。それで、最終の決済をする一方で、積水の社員が五反田へ出向き現地を確認したところ、本物の土地所有者に通報され警察に任意同行を求められたこともあった。これらの時点で、決裁権者である社長が、おかしいからきちんと調べろと指示をすれば事足りる話だったのに、必要な確認すらしなかった。経営者として善管注意義務違反にあたると考えます」
知れば知るほど、事前に防げたのではと思える不可解な点が多いのである。
そして、「地面師事件」最大のミステリーは積水が支払った55億円の行方だ。
事件では主犯格の内田マイク被告ら地面師集団10名が起訴されているが、騙し取られた55億円のうち地面師たちが得たとされる金額は数億で、残りの大半がどこの誰に渡ったのかは行方知れず。警視庁捜査2課や検察という捜査機関をもってしても、事件の全容解明には至っていないのである。
これには、積水ハウスの機関投資家を抱えるアメリカの連邦捜査局も関心を持ち、水面下で内偵を続けていると和田氏が明かす。
「3月19日、FBIから私のところへ電話がありました。内容については詳しく喋れませんが、弁護士と通訳を交えて1時間くらい話しまして、聞かれたことには正直に答えました。FBIは、この事件について相当興味を持っていると感じましたね。今回の事件はお金の流れが非常に不鮮明ですから、アメリカの捜査機関は“これは間違いなく資金洗浄、マネーロンダリングに使われている”と言っておりました」
封印された「調査報告書」でも指摘されているが、積水は五反田の土地代金を、仲介者であるペーパーカンパニーなどに、預金小切手の形で支払っていたのだ。
「我々の世界では、所有者との間に実体のない会社を挟ませることはありませんし、支払いに振り込みではなく預金小切手が使われることなんてほとんどない。しかも7、8枚に分けて1枚で三十数億円というものもあった。それが即日、三菱UFJ銀行で何者かによって現金化されて消えた。現経営陣が不正な取引に関与したこと、そして事件の詳細をこのまま隠し続ければ、積水ハウスは今後アメリカで事業ができなくなる恐れもあると危惧しています」
そう語る和田氏は、株主総会で古巣に戻ることが叶えば、新たに第三者委員会を立ち上げて事件の真相解明に努めると息巻く。
「私怨で動いていると言われることがありますが、私は経営の現場に復帰することが目的ではありません。地面師事件の真相を、歪んだ形で世の中に隠し通す会社にしたつもりはないのに、現状そうなっている。このままでは会社がおかしくなると思っていた時、最初に立ち上がった勝呂から相談があって、それなら加勢するとなったのです」
再び勝呂氏が話を継ぐ。
「決して和田さんがCEOや代表取締役、議長などに就任することはありません。あくまで平取として会社のガバナンスに道筋がついたら、1年で退任することもあり得ます。こうまでして声を上げたのは、隠蔽体質の組織の中で、社員の悲鳴が聞こえているから。すでに優秀な社員の離反が始まっているのです」
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