WHO上級顧問・渋谷教授、政府クラスター班・西浦教授が発した数字のマジック

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 東京オンコロジーセンター代表の大場大氏、国立がん研究センター研究所がん幹細胞研究分野分野長の増富健吉氏は共にがんを専門とする。忖度のない立場から語り合う今回のテーマは、〈感染者数は報告の10倍、42万人に死亡リスク〉というショッキングな発言への異議申し立て――。

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計算がまったく合いません

大場:英国キングス・カレッジ・ロンドン教授でWHO事務局長上級顧問も務める渋谷健司氏が、4月16日の報道番組で、新型コロナウイルスによる日本の感染者数と死亡者数についてこう言及しました。

〈国内ではPCR検査数が抑えられているので、実際の感染者数は報告数の10倍(約10万人)以上いるのではないか。そして死亡者数が海外報告より少ない理由については、これまで通常の肺炎で死亡していたケースの中に未検査の新型コロナウイルスが見逃されているからだ〉と。

 増富先生はどのように思われますか?

増富:10倍の感染者がいるということは、亡くなる方も10倍いるということになりますよね。現実には亡くなっている方は236人(4月20日現在)で致死率が約2%ですから、致死率から推測した感染者数とは計算がまったく合いませんね。

 逆に、日本での致死率が世界諸国と比べても極めて低い、すなわち、10倍低い致死率0・2%だという可能性は、まだあり得る話だと思います。日本の医療水準や法体制下において、新型コロナウイルス「見逃し」のせいで、死亡者が今より10倍いるという理屈は無理があるのではないかと思います。

大場:もし万が一、通常の肺炎死亡患者の中で、新型コロナウイルスが見逃されていたケースがあったとします。重症肺炎患者は人工呼吸器管理ケースがほとんどですから、濃厚接触ケアが必要となってきます。

 新型コロナウイルスが念頭に置かれていない医療環境下では、医師、看護師をはじめとする多くの従事スタッフ、あるいは同じ部屋の患者さんに、かなりの確率で二次感染を引き起こすことでしょう。まさに大規模院内クラスターを生み出し、すでに社会で可視化されているはずです。

 また仮にそのようなケースがいくつかあったとしても、死亡者数の桁が変わるほどの話にはならないでしょう。臨床経験の乏しい医師によるロジックのみを操った危ない話だと思いました。

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