新型コロナでプロ野球選手の契約更改は大変なことになる【柴田勲のセブンアイズ】
新型コロナ感染拡大を受けて緊急事態宣言の対象地域が全都道府県になったが、感染は拡大する一方のようだ。
私も「密閉、密集、密接」の3密を避ける生活を送っている。でも、どんなに注意をしていても、新型コロナは感染の危険性がある。だれがいつ罹患してもおかしくない。
野球界では阪神の藤浪晋太郎ら3選手がPCR検査で陽性と診断された。梨田(昌孝)も感染し、現在は集中治療室から一般病棟に移った。かと思えば、阪神OBの片岡(篤史)が感染したことを公表した。
深刻さは増すばかりだ。医療崩壊の危機が叫ばれているが、私も経験した。ある病院に胃の検査をお願いしたのだが、断られてしまった。メドは立っていない。
前回はプロ野球が6月に開幕しても難題が山積していると記した。途中開幕をにらんでも、全世界的にスポーツの大会が中止・延期・自粛している現状で実現できるか。何度も言うが、感染拡大は止まっていない。はなはだ疑問だ。
NPBは6月開幕は無理でも、どうやら100試合をメドに、球宴直後あたりから最低でも70試合を実施したい。もちろん、ダブルヘッダーを組み入れながらだが、こんな考えもあると聞く。
NPBは諦めずに最良の策を探っているようだ。
しかし、この新型コロナにはだれもが疑心暗鬼に陥っている。感染者数が激減し、終息が見えない限り、開幕は歓迎されないだろう。プロ野球だけ特別とはいかない。
途中開幕しても難問山積、仮に中止になったらなったで、また多くの問題が噴出してくるだろう。
大きな問題の一つが選手の年俸だ。開幕を延期している米メジャーリーグは選手の今季年俸を試合数に比例させるという。MLBと選手会が合意したそうで、レギュラーシーズンは162試合の予定だが、81試合なら年俸・出来高は半減する。
まず、途中開幕となれば日本もNPBと選手会の話し合いになろう。選手は2月1日から11月30日まで拘束されることを条件に球団から給料をもらっている。その際、143試合が行われることを前提にしているのか。そのへんの契約の細かい部分はわからない。わからないものの、試合数に応じた年俸削減が議論に浮上するのは確実だろう。
今季中止の場合はどうなるのか。年俸査定の材料がない。でも、全選手が据え置きなんてことは考えられない。
無観客試合もなくなり、球団にとって最後の頼みの綱だった放映権料も同時になくなる。収益はボロボロだ。赤字経営への転落が予想される。これまで球団が赤字に陥れば、親会社が赤字補填をするのが常だったが、今回のコロナ禍でダメージをこうむっている親会社も相当あるに違いない。
球団経営存続危機もありうる。
本社あっての球団だし、当然のことながら来季の年俸に大きな影響を及ぼすのは間違いない。
例えば全選手一律20パーセント削減とか、年俸に応じた削減パーセントを決めるとかいろんな案が出てくるかもしれない。高額年俸ながら、これからの活躍が期待できないベテラン選手がリストラの対象にされる可能性もある。
また、今年もドラフトが開催される。どうしても戦力外通告で枠を設ける必要がある。でも、試合がなければ成績もない。どうやって戦力外の選手を決めて通告するのか。
悩ましい問題が次々と出て議論になろう。
今後、新型コロナ禍はどう転んで行くのか予断を許さない。でも、NPBと選手会は知恵を出し合って、この未曽有の難局を乗り越えてもらいたいと思う。
まずは新型コロナがいくらかでも収束の気配を見せてくれることと、梨田、片岡両氏が一日でも早く治癒することを願う。
関根潤三さんがお亡くなりになった。93歳。巨人には近鉄から移籍して来た1965年の1年間だけ在籍した。関根さんは代打が多かったけど時に左翼を守り、私が中堅なんてことがあった。
キャンプ中、同部屋だった。驚いたことに関根さんがバットを振ったのを一度も見たことがない。バットを持つのだが、ボールがス―ッと軌道を描くのをイメージしてバックスイングを取り、ステップする。これだけだった。
タイミングを重視していた。「バットは自然に振れるから振る必要はない」と話していた。
投手で65勝、打者として1137安打を放っている。天才型のタイプだった。
75年に長嶋(茂雄)さんに請われてヘッドコーチに就任した。この年は最下位に沈み、責任を取る形でヘッドを辞任した。
実に温厚な方だった。ご冥福を心からお祈りいたします。