新型コロナでも放送延期なしの「スーツ2」 法廷シーンがないドラマの見どころは?
“バディもの”の魅力
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対応で民放各局が4月スタートの新ドラマの初回放送を見合わせるなか、フジテレビの看板ドラマ枠である月曜9時枠、いわゆる“月9”は無事、初回の放送を終えることができた。
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今期のドラマは織田裕二(52)主演の『SUITS/スーツ2』で、18年10月クールにシーズン1が放送されている。
このシーズン1は最高視聴率が14・2%、平均視聴率は10・8%(ともにビデオリサーチ調べ・関東地区:以下同)をマークしている。
そして今回放送されたシーズン2の第1話も11・1%を獲得し、視聴者のテレビ離れが目立つ昨今のなか、合格点となる二ケタの数字を安定して叩き出す人気ソフトとなっている。
そこで今回は、この『SUITS/スーツ』の面白さ、そして見どころを考察していこうと思う。まずは観たことのない読者のために本作の概要からだ。
『SUITS/スーツ』はもともと、アメリカのUSAネットワークでシーズン9まで放送されていた同名のメガヒット連続ドラマを原作とする日本版のリメイクである。この日本版でもアメリカ版同様に法律事務所が舞台となっている。
本作の主役となる敏腕弁護士・甲斐正午役に織田裕二、そしてその甲斐の右腕となる鈴木大輔役に中島裕翔(26)が抜擢された。
シーズン1の放送前には、織田演じる甲斐が所属する弁護士事務所の所長兼代表弁護士・幸村チカ役に、鈴木保奈美(53)が起用されたことも話題となっていた(鈴木の月9出演は約24年ぶり。さらに織田とは同じ月9枠で91年1月クールに放送された『東京ラブストーリー』以来、実に約27年ぶりの共演が実現したため)。
概要が分かったところでいよいよ本題に入ろうと思う。本作の見どころは、はなんといっても“バディもの”としての面白さを貫いているところにある。
主人公である甲斐正午は、自他ともに認める“負けない弁護士”だ。頭がキレる反面、勝つためなら平気で相手にフェイクをかますのはもちろん、時には違法行為ギリギリの手段を用いることもある敏腕弁護士である。まさに実務に長けた“やり手”なのだ。
そしてこの甲斐とパートナーを組むこととなったのが、頭脳明晰で一度見たものは決して忘れないという驚異的な完全記憶力を持つ鈴木大輔である。
実はこの鈴木、経歴を詐称しているニセ弁護士で、本当の名は鈴木“大輔”ではなく “大貴”という。
そして甲斐は、その事実を知りながら、自分の勝利のために大輔の優秀さを利用すべく、手放そうとはしないワケだ(ただ、上司の幸村にはその秘密を知られていたため、シーズン1の最終回で2年間の期間限定でボストン行きを命じている)。
逆に大輔は、頭脳のスペックだけ見れば遥かに甲斐を上回っているが、いかんせん実戦経験に乏しい。つまり勝ち方を知らないワケである。
だからこそ大輔は、自分が納得できないやり方だと分かっていても、甲斐のテクニックを吸収していく必要があると自覚しているワケだ。
要はこの二人が、互いに足りない部分を補って、訴訟に勝ち続ける姿が痛快なのである。
それは同時に、大輔の弁護士としてさらなる高みに到達していく成長物語にもなっていて(といってもニセ弁護士だが)、シーズン1の第10話の冒頭にクライアントから「この親にしてこの子あり。さすが甲斐先生のお弟子さん」と褒められるシーンがあるのだが、これはまさにその象徴といえよう。
本作の見どころとして次に挙げられるのが、このコンビ以外の脇キャラも個性的な点だろう。
特に幸村チカ(鈴木保奈美)と甲斐正午(織田裕二)のツーショットシーンは、あの往年の名作『東京ラブストーリー』を知る視聴者からすれば、毎回ワクワクもの。
その当時は恋人関係だった二人が、時を経て今回はビジネスライクな上司と部下の関係を巧みに演じているからだ(『東ラブ』での鈴木保奈美の役名は赤名“リカ”だったが本作では幸村“チカ”と一字違いになっている点は注目に値する)。
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