コロナ禍で試される「上司力」ケーススタディ“え、部長まだ会社来てるんですか”
LINEの個人アカウントをつないで
4月7日の緊急事態宣言には「社会機能を維持するために必要な職種を除き、オフィスでの仕事は原則自宅で行うように」とあり、企業勤務の多くの皆様がそれに従っていると思いますが……。以下、20弱の社から漏れてきた「嘆き節」を3つに類型化してみました。
・中小企業A社の場合
都内にあるメーカー100名規模。テレワークの仕組み、特に社員1名1台のノートPC支給が無い。また社外から社内イントラネットに接続するフローも無い。仕方なく全員出社をベースに運営中。役員や部長などの幹部クラスはもちろん毎日出社。徐々に出社日数は減らしているものの、それは有休対応によるもので、いつまでこれを続けられるか不明。
「今日はAさん会社に来てるけどBさんお休みだから、この会議出来ないね」というコミュニケーションが頻発し、若干の混乱状態。生産性は著しく低下。
有休を使うことに疑問を持つ社員も多くいるが、全社総務機能が弱く、テレワーク対応整備や休暇扱いに対する議論が遅延。また、どうしても遠隔かつ複数人でコミュニケーションを取りたい場合は、まさかの「LINEの個人アカウント同士をつないでオンラインMTG」を行うなど、仕組み不足が露呈され続けている。
・ベンチャー企業B社の場合
関東圏にあるIT系ベンチャー200名規模。緊急事態宣言後、全社員、テレワークに一斉切り替えを実施。基本出社せずに仕事が出来る状態になっている。一方で、月末もしくは月初の捺印業務以外は出社をしない前提の役員や部長などの幹部クラスが頻繁に出社をしている場合もあり、テレワーク方針に一貫性がない。
中には自宅でしっかり仕事を進めている役員クラスもおり、経営幹部間/個人間でテレワークに対する理解と実行度のバラつきが発生。そんな中、原則自宅勤務を貫いてきた幹部クラスに、「これからは週1、2回くらい出社するように」と、謎のお達しが上司すなわち経営ボードから届く。会社に出るべきか、自宅に居るのか? の判断を経営ボード側がハッキリしてくれないと嘆く社員が多く、そのブレた方針が会社への不信感を徐々に生み出している。
接続するのに平気で1~2時間
・大企業C社の場合
東京に本社を構える大手企業。テレワークの仕組み自体は存在し、多くの社員が実践しているが、社内イントラネットへ接続するのに1~2時間は平気でかかる。そのため朝9時の始業時間は自宅でPCの前に待機し「我先に」と、イントラネットへアクセスしに行く渋滞が多発。
「せっかく家で仕事出来るのに効率が悪い」という不満の声続出。これに業を煮やした課長クラス部長クラス、つまり責任範囲が大きく、業務量も多い役職者達は結果的に業務を急ぎ行うために出社することになり、「原則自宅勤務」を部下に命じながらも、自らはそれに背く結果となってしまっている。
情報システム部門が急ぎ対応しているものの、大企業のシステム改変には多大な時間がかかり、そこに諸々の社内政治要素が入り込んできてしまっている現状を見た多くの社員は、「結局うちの会社はリモート無理なんだよね」と嘆いている。
上記3パターンに共通するのは役員や部長つまり幹部クラスが出社を余儀なくされているということです。これではテレワークの率先垂範にならず、いつまで経っても外出自粛、他人との接触削減が実現されません。会社にとって重要である幹部クラスが感染するリスクも孕んでおり、対応は急務となっております。
一方で、テレワークに全く対応できていなかった企業が、一気に運用フローを構築し始めた例があります。ある100名規模企業なのですが、
・COO=副社長50代が自らMacBook Airを購入し、オンラインMTGツール(ZoomやLINEなど)を手に入れ自身で徹底的に使いこなし始めた。
・彼は会社に来ることもあったが、とにかく全てのMTGをオンラインで実施するようになった。
・エレベーターに乗ってフロア移動すれば会える人間とも、徹底的にオンラインMTGを遂行した。
・ノートPCが全社員に普及していなかったが、1日で誰に行き渡っていないか確認指示し、手配完了した。
・ノートPCやオンラインツールの購入費用は、自身の年間予算の中からの捻出を即決した。
・社内イントラネット、共有フォルダへのアクセスは限られた人間にした。
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