体験ルポ セーフティネット「無料定額宿泊所」がコロナ・クラスターになる日

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オッサン15人で「3密」の築50年

 戸越銀座商店街に、堂々と面している2階建ての無料低額宿泊所に到着する。

「築50年近いオンボロのアパートを増築したんです。14、5人の男性が、共同生活をしていらっしゃいます」。嗚呼、白昼夢であってほしい。

 私が寝起きする部屋は、ギシギシと鳴り響く階段を上がった2階だ。少し大きめの変形の6畳間だという。なんじゃ、こりゃあ! 右に自作の2段ベッド、左には市販の簡易ベッド。

 あとあと判明するのだが、管轄の厚生労働省では、1人当たりおよそ5から7㎡のスペースを確保するように、と指導している。実態は、大型犬の犬小屋に等しい。また、6割の人が、数人の相部屋かベニヤのような薄い板1枚で仕切られた万年布団を敷くだけのスペースに、幽閉されている。

 参ったなあ。身から出た錆とはいえ、瞼が潤む。地獄絵図だ。いま自分は、日本の最貧困地帯に足を踏み入れたようだ。発展途上国のスラム街も、かくや、である。

 私に与えられたプライベート・スペースは、2段ベッドの上段のみ。その1メートル上側には、ベニヤ板のような天井が迫っている。即身仏になるような錯覚が起きてくる。

 片手を伸ばせば、他の入居者にぶつかる狭隘空間だ。ほとんどの部屋が、窓すらない。居住者各位の身体各部から発せられる異臭に、鼻がねじ曲がりそうだ。収容者たちはファブリーズを噴霧し合っている。

 1階の食堂に避難して、施設生活についての細かい説明を受ける。

 終戦直後に誕生した社会福祉法に則って運営されている。提示された書類の宿泊所利用契約の尤もらしい書類によると、食住合わせたポッキリのセット契約で、毎月8万4200円とある。毎月の生活保護費から支払うのだが、手元に残るおカネは、2万5000円ほどでしかない、と告げられる。追いはぎに遭った気分だ。

 そこは、無料宿泊所の最大手のNPO法人だった。東京23区内に40施設、そして多摩、埼玉、神奈川、千葉の各所に124施設を運営している。総入居者は4800人とも聞いた。

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