FBIからの電話~コロナ禍の株主総会「積水ハウス」“仁義なき戦い”
“間違いなくマネーロンダリングに使われている”
もっとも、このような指摘を含む報告書の全文を、積水ハウスは模倣犯の発生や捜査上のプライバシーを理由にして公表しなかった。
積水ハウスの責任を問う株主代表訴訟でも「不開示」の姿勢を貫き、裁判所から提出命令を受けても即時抗告で争う始末。却下されて渋々と開示に応じたが、一部黒塗りの形で閲覧謄写に応じる徹底ぶりだった。
そして、「地面師事件」最大のミステリーは積水が支払った55億円の行方だ。
事件では主犯格の内田マイク被告ら地面師集団10名が起訴されているが、積水が騙し取られた55億円のうち地面師たちが得たとされる金額は数億で、その大半がどこの誰に渡ったのかは行方知れず。捜査機関も事件の全容解明には至っていないのである。
これには、積水ハウスの機関投資家を抱えるアメリカの連邦捜査局も関心を持ち、水面下で内偵を続けていると和田前会長が明かす。
「3月19日、FBIから私のところへ電話がありました。内容については詳しく喋れませんが、私と弁護士と通訳を交えて1時間くらい話しまして、聞かれたことについては正直に答えました。FBIは、この事件について相当興味を持っていると感じましたね。今回の事件はお金の流れが非常に不鮮明ですから、アメリカの捜査機関は“これは間違いなく資金洗浄、マネーロンダリングに使われている”と言っておりました」
「調査報告書」でも指摘されているが、積水は五反田の土地代金を、仲介者であるペーパーカンパニーなどに、預金小切手の形で支払っていたのだ。
「我々の世界では、所有者との間に実態のない会社を挟ませることはありませんし、支払いが振り込みではなく預金小切手が使われることなんてほとんどない。しかも7、8枚に分けて1枚で30数億円というものもあった。それが即日、何者かによって現金化されて消えた。現経営陣が不正な取引に関与したこと、そして事件の詳細をこのまま隠し続ければ、積水ハウスは今後アメリカで事業ができなくなる恐れもあると危惧しています」
ちなみに、機関投資家に助言を行うアメリカのインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と、グラスルイスの大手2社は、阿部会長と稲垣副会長の再任に「反対推奨」、つまりはノーを突き付けている。片や「前会長派」が推す和田氏と勝呂氏の取締役就任はグラスルイス社のみが「賛成推奨」とした。
今や「助言会社」は、投資家たちの判断を左右する影響力を有しており、グループや協力企業の株を抱き込み「会長派」有利とされてきた株主総会の行方は、蓋を開けてみなければ分からない。
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