世界から賞賛された「韓国」の新型コロナ対策 「この時期、韓国にいて良かった」という日本人も

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世界から信頼を失った日本のPCR検査数

 PCR検査については2通りの考えがあった。

「むやみに検査するよりクラスターや感染者の重症化を抑えるべき」という専門家の意見はもっともらしく聞こえる。医療機関の負担が増大し、緊急性のある患者や重症患者を治療できなくなるからだ。

 一方、「早くPCR検査を行わないと、無自覚・無症状の感染者により感染拡大する恐れがある」という声も。今の日本がこうした状態に陥っていることは火を見るよりも明らかだ。

 韓国政府は明らかに後者の考えで、とにかく検査を急いだ。

 保健所以外でも韓国70箇所以上で「ドライブスルー検査」が行われ、これに「ウォーキングスルー検査」も加わった。

「ウォーキングスルー検査」は透明の検査ブース内にいる患者の検体を採取するというもので、検査時間はわずか3分。「ドライブスルー検査」の10分よりさらに短い。

 PCR検査の結果は1~2日後にメールか電話で知らされる。

 こうした検査は、感染者との接触後に発熱等の症状がある場合や、感染が疑われるケースは「無料」で受けられる。仮に無料の検査対象に該当しなくても、16万ウォン(約1万4千円)を支払えば誰でも検査は可能なのだ。3月下旬からは仁川空港でも「ウォーキングスルー検査」が実施されている。

 少し前まで韓国の1日あたりの検査数は8000件だったが、現在は2万件となっている。4月4日時点での総検査数は44万件に達した。よほど重症化しないと検査を受けられない日本とは大違いだ。

 フランスのマクロン大統領は韓国の防疫対策を「優秀な措置」と絶賛し、導入検討を表明。すでにアメリカやドイツでも行われている。日本でも新潟市や名古屋市が「ドライブスルー検査」を開始する意向を示した。

 もしも韓国での医療崩壊が事実なら、こうした検査方法を導入することはまずないだろう。

 一方、日本の1日あたりの検査数はいまだ千件台にとどまっている。これまでに検査した総数も7万件。感染者や死者が急増したアメリカやイタリアよりもずっと少ない。

 在日米国大使館のHPでは、日本の検査数の少なさを指摘し「有病率を正確に把握することは困難」との見解を示している。

 安倍首相は緊急事態宣言を発令する直前の4月6日に「PCR検査の1日あたりの実施数を2万件に増やす」という新たな方針を打ち出した。

 だが検査に保険が適用された3月6日以降も検査数は一向に増えていない。しかも、芸能人でさえ複数の医療機関を回り、最後は頼み込んでようやく検査を受けられたと報道されたばかりだ。こうした状況から政府の方針を額面通りに受け取るのは難しい。

 もちろんPCR検査は決して万能とは言えないだろう。韓国のPCR検査の精度についても、その判定に懐疑的な声がある。

 それでも依然としてPCR検査数が圧倒的に少ない日本と比べ、多くの韓国人はいつでも検査してもらえることに“安心感”を抱いている。

 これこそが、在韓日本人が「今、日本にいなくてよかった」と漏らす理由だ。

 ちなみに韓国で感染者が急増していた頃、韓国のインターネット上では

「日本の感染者数はおかしい」

「オリンピック開催のために必要な検査を行わず、感染者数を隠蔽している」

「もしオリンピックが延期か中止になったら感染者数が爆発的に急増するのではないか」という声が上がっていた。

 皮肉なことに、実際そのとおりの展開となっている。

IT先進国ならではの感染防止対策

 韓国人にとって、もう一つの安心材料は台湾と同じく、スマートフォンのアプリにある。

 元々、住民登録制度のある韓国では政府や医師が感染者の住民登録番号を入力すれば、ある程度の行動履歴や感染経路の確認が可能だ。

 監視社会の韓国では800万台もの監視カメラが設置されているという。ひとたび感染者が出れば、カメラの映像解析やクレジットカードの利用履歴、スマートフォンの位置情報によって感染者の移動ルートや濃厚接触者を割り出すこともできる。

 それに加え、保健当局もPCR検査の結果をデータベース化している。スマートフォンのGPS機能で感染者の位置情報を確認し、移動データを公開。企業や個人が開発したアプリによって、地図に移動ルートが表示されるのだ。

 感染者のこうした細かな情報はアプリやSNSによって国民の知るところとなる。

 感染者や濃厚接触者の動線をアプリで知ることができるので、大邱での集団感染が起きたときでさえ国民は意外と冷静だった。

「政府からの情報が徹底しているので、感染者が立ち寄った場所には近づかないようにしている」

 そうした声があったように、韓国では国民がしっかり予防できるシステムになっている。

 もちろん匿名とはいえ、韓国でも感染者の個人情報の保護が懸念されている。「プライバシーの侵害にあたる」という批判がないわけではないが、「今は個人のプライバシーよりも感染拡大の阻止のほうが重要」といった雰囲気だ。

 大邱市での感染拡大以降、ソウル市内でも集団感染が発生しているが、現時点においても感染経路不明者は1割以下。首都圏での感染拡大をかろうじて防いだ感がある。

 スマートフォンのアプリも駆使した監視体制が功を奏してか、3月末までは感染者数が世界で15位にランクインしていた韓国だが、4月2日以降はランキング外となっている。徐々に新規感染者数が減っているのだ。

 日本でも感染事例のある場所を地図で確認できるサービスが最近になって開始されたが、肝心のPCR検査数があまりにも少なすぎる。それを考えると、どこまで役立つかは疑問だ。

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