西武、山賊打線が抱える不安 いまこそ黄金時代の成功を思い出すべき時

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 20代後半のメンバーはいずれも一軍での実績が乏しく、期待値込みで名前を挙げた選手ばかりである。彼らが順調にレギュラーに成長するかどうかはまだまだ未知数であり、特に外野は手薄な印象だ。頼みの森も順調にいけば、2022年シーズン中に国内フリーエージェントの権利を取得する見込みであり、もし他球団に流出ということになれば、チームは土台から崩れることになるだろう。また山川、外崎、源田の三人についても他球団から狙われる可能性は高い。早い段階で彼らの流出を阻止しながら、中軸を任せられるような選手を早く育成することが重要になってくるだろう。

 一方、昨シーズンまでは弱点と見られていた投手陣は楽しみな顔ぶれが揃っている。高橋、今井、松本、多和田は一軍で既に実績のある面々で、5年後に全員が30歳前後とちょうど脂の乗った時期となっている。そこに昨年と今年2位で加入した渡辺と浜屋が加わってくれば、バランスのとれたスケールのある先発ローテーションを組むことが可能になるだろう。

 リリーフ陣では昨年平良が台頭してきたことが大きい。5年後も26歳とまだまだ若く、順調にいけば抑えを任せられる可能性も高い。また今年ドラフト1位で入団した宮川もセットアッパー、抑え候補として期待できる実力者だ。サウスポーが斉藤、野田くらいしか見当たらず、先発候補に比べると少し物足りない印象だが、今年飛躍が期待される与座と伊藤がいるのもプラス要素だ。上位指名でスケールのある投手を多く指名してきたことが、奏功していると言えるだろう。

 以上のような状況から考えると、そろそろ大物野手を指名することが必要になってくる。過去10年のドラフトを振り返ってみても、上位で指名した野手は森、山川、西川愛也(2017年2位)の三人だけである。そこから森と山川が不動の中軸となり、秋山、金子、外崎、源田といった3位以下で指名した選手が成長しているのは嬉しい誤算だったが、そろそろ将来の中軸獲得を真剣に検討する時期に来ているだろう。80年代から90年代にかけてか黄金時代を築いた時も石毛宏典、伊東勤、辻発彦、田辺徳雄、清原和博、鈴木健という面々を上位で獲得している。今こそ当時の成功を思い出し、今の主力が元気なうちに野手陣の立て直しを図ってもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月16日掲載

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