専門家はほぼゼロ「コロナウイルス研究の失われた10年」を考える
いまひとつ新型コロナウイルスを把握しきれていない、どのような心構えで今のコロナ禍と向き合えばよいか。そんな不安を抱える方が少なくないのは当然のこと。実は、コロナ研究の専門家は世界を見渡してもほぼ皆無なのだとか。東京オンコロジーセンター代表の大場大氏、国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長の増富健吉氏は共にがんを専門とする。専門外領域のふたりだが、目からうろこの指摘が続いた。
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「風邪ひきウイルス」扱いだった
大場:テレビをつけると、「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」という業界用語が飛び交い、ワイドショーや報道番組で「専門家」枠として露出機会の多い常連さんがいますよね。あの辺の人選はテレビ局側が決めているのでしょうけれど、冷静にその人たちの背景をみると、一体何の「専門家」なのかよくわからないことがあります。
中でも群を抜いてメディア登場回数の多い岡田晴恵氏は、これまで150本近くのテレビ出演数があると言います。国立感染症研究所(NIID)の研究員としての職歴があり、現在の所属は白鴎大学教育学部の教授。白鴎大学に医学教育機関なんてあったっけ? と最初に思いました。
岡田氏の大学職員プロフィール欄には専門分野として感染症学、公衆衛生学、児童文学と書かれています。個人的には、現場で何もリスクを負っていない人間が公の場であれこれ語り過ぎることに大きな違和感を抱いてしまうのですが。そこで、未曾有の疫病に対する「専門家」の役割について、どのようにお考えでしょうか。
増富:まあ、個人名はさておき、その前に申し上げておくと、そもそもコロナウイルス自体が「風邪ひきウイルス」という取り扱いだったわけです。SARS (重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)が問題になって初めてコロナウイルスに対する危機感をウイルス研究者はじめ、世界が認識したというのも事実です。
ところが、SARSとMERSの際も、今回ほどの世界的パンデミックに至らなかったということが、「コロナウイルス研究の失われた10年」を招いてしまった要因かもしれません。
これは研究者の敗北であり、本当はSARSないしはMERSが発生した際、世界中の研究者と政治家がこのウイルスに対する危機を認識して、集中的に研究に取り組むべきだったというのが最大のポイントです。つまり、そもそもコロナウイルス自体を研究対象として専門的に取り扱う研究者が日本はじめ世界を見渡してもほとんどいないという状況で、今回のパンデミックに至ったわけです。
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