コロナ経済対策は間違いだらけ 「30万円給付」で日本は回復しない!

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財政状況が厳しい

 政府案では、コロナ発生前に比べ収入が減少し、かつ住民税の非課税水準にまで落ちた世帯などを対象としている。例えば、専業主婦と子どもを持つ会社員の場合、年収200万円前後にまで減少した世帯である。

 ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏は、

「企業や家計に対し、現金を給付することは理に適っていますが、どれだけの国民に現金が行き渡るのか、という点で問題があります。今回の基準だと、やはり大多数の家庭は給付を受けられないことになります。例えばアメリカの場合、年収7万5千ドル未満なら1200ドル、子どもにも500ドル」給付される方針です。日本に比べて格段に範囲が広く、規模が大きいといえます」

 緊急事態宣言により閉店する小売り店も多いのに、現状では家計を救い、消費を刺激する策には到底なっていないのだ。大胆な政策に踏み切れないのは、

「日本は千兆円を超える借金があるので、財政出動しづらい状況にあります。他の多くの先進国に比べ、財政状況が厳しいといえます」(同)

 実際、先のデスクは、官邸が政策を練る過程で、

「野党が主張した消費減税も国民一律の現金給付案も、財務省が強硬に反対した」

 と指摘する。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は、中小企業への支援が重要だと強調する。

「無利子無担保の融資でも借金であることには変わりませんから、消費が落ち込む中、どれだけの経営者が借りようと思うのか。日本経済の細胞である中小企業を壊死させないため、例えば、日銀の当座預金に積み上がる約400兆円もの資金を中小企業に貸し出し、経営状態が戻るまで返済を猶予するなど、大胆な政策を打つ必要があります」

 世帯への給付についても、

「普段から生活が苦しい人は電気・ガス・水道代だって節約しています。そうしたライフラインの代金を政府が肩代わりするくらいの政策を掲げてほしかった」

 どんな顔もマスクを外すまでは表情を窺い知ることはできないが、今回の対策で日本経済が回復するか、蓋を開けずとも一目瞭然というわけだ。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

特集「『緊急事態宣言』を生きる」より

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