アイ~ンはギャグじゃない…新装版!! 志村けん『変なおじさん 完全版』刊行
荒井注との2人きりの海外旅行
志村の人生は最初から順風だったわけではない。ドリフターズの付き人時代には、〈5人が食べ残したラーメンをあわせると1人前になった。それを付き人同士で分けて食った〉(42)日もあり、〈小柳ルミ子ショーを見に来た若い客に大受けしたコントが、三波春夫ショーの年配客にはさっぱり受けなかった時に、大ショックを受けた。天狗になっていたのが、自信をグシャグシャにされて、それから誰にでもわかる笑いじゃなきゃ通用しないと、考え方を変えた〉
とにかく勉強熱心なのだ。
〈僕だってなんとか生き残ろうと思って、人が遊んでる時は一緒に遊んで、向こうが酔っぱらって寝てる間に、こっちは寝ないでお笑いの勉強をしてた。ネタを考えたり、ビデオを見ながらメモをとったりとか。人と同じことをしてたら、生き残るのは難しい〉
〈あいつは変わってる、と言われるのは光栄なことだ。1回きりしかない人生なんだから、自分の好きなように、自分に正直に生きようよ〉
〈アイ~ンはギャグじゃない〉という宣言あり、お笑いビッグ3やダウンタウン、爆笑問題の笑いについての分析あり、の中で印象に残った章を一つ選ぶとしたら……荒井注との2人きりの海外旅行について振り返った部分になるだろうか。
荒井に代わって志村がドリフに入ることになった頃のこと、2人でブラジルに行く話なのに、ほとんどが経由地のニューヨーク滞在記になっている。〈ずっとビデオを回していたら、番組が1本できたくらい、おもしろい旅だった〉という落語みたいな珍道中の中身はぜひ本書を確認してもらいたい。
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