PJ機内で逮捕はフェイク……カルロス・ゴーンが私に700分語ったこと
「ゴーン会長追放」は日産に何をもたらしたのか
羽田空港到着直後のゴーン氏を、弁解を聞くこともなく逮捕した容疑の金商法違反は、「未払いの役員報酬」の虚偽記載という形式犯だったため、勾留延長請求が裁判所に却下され、全面否認のゴーン氏の保釈許可が必至の状況となった。検察は、「窮余の一策」として、「無理筋」の特別背任で逮捕・起訴した。その結果、ゴーン氏は、日産だけでなくルノー、三菱自動車からも追放され、「有罪率99%超」という絶望的な日本の刑事裁判に直面することになった。
西川氏ら日産経営陣による「ゴーン会長追放」は“成功”したように見える。しかし、それが、日産という企業にいかなる結果をもたらしたのか。
「ゴーン会長追放」の中心人物だった西川氏は、2020年9月に別の報酬不正で社長辞任に追い込まれ、内田誠CEO、アシュワニ・グプタCOO(最高執行責任者)、関潤副COOの「3頭体制」による新経営体制が12月1日に発足したが、約3週間後にはナンバー3の関氏が辞任を表明し、「3頭体制」は崩壊した。日産の株価はゴーン会長追放直後から下落を続け、業績も崩落状態となっている。日産経営陣は、業績悪化の原因を、ゴーン氏による拡大路線にあると主張しているが、新型コロナウイルスによる経営危機に直面している日産にとって、3社のアライアンスをゴーン会長が掌握していた体制と、経営の軸すら定まらず、求心力なく迷走している現在の経営体制と、危機を克服する上でどちらが良かったのか、誰の目にも明らかであろう。
日産は、ゴーン氏によるV字回復前の1999年以来、20年ぶりに倒産の危機に直面することになりかねない。「ゴーン会長追放クーデター」がよって日産の株主や、社員にもたらしされた損害はあまりに大きい。
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