コロナ禍で地獄を見た「民泊経営者」に降臨した「ワケありカップル」

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帰国邦人、基地在住軍人と…

 アメリカと日本に家を持ち、イベント業を生業とする梅沢励さん(44)は、4月2日午前にマイアミから羽田空港に降り立った。4月3日以降の帰国者からPCR検査が義務付けられたが、前日に到着してしまった梅沢さんは、検査を受けることなくレンタカーで千葉県の実家へ戻り、そのまま2週間の自宅待機に突入した。

 政府は水際対策の強化として、海外からの帰国者については2週間、自宅や国が指定するホテルに自費で泊まるよう要請している。しかし自宅に戻っても、同居家族がいれば感染の可能性はぬぐいきれない。千葉にある梅沢さんの実家には共に73歳になる父母が住んでいる。

「今のところ、イベント用のコンベンションセンターは、野戦病院みたいになっているようで
5月末までのイベントは全て中止とアナウンスされました。いつになったらアメリカに戻れるやら。タイミングを誤ると 入国拒否、永住権取り上げなんてことになるかもしれず、これが怖くて帰れない」と梅沢さんは語る。当面の間、日本滞在は続きそうだ。

 
 前述の田尻さんはこういうケースでも民泊を活用して欲しいと話すが、民泊ポータルサイトAirbnbを利用することは、検疫所から禁止されているのが現状だ。

「私の管理している民泊はゲストハウスなどと違い、全てアパートタイプの簡易宿泊所なのでホテルよりも他人と接触する可能性は低いです」。Airbnbにも検疫所と掛け合って欲しいと訴えたが、帰国邦人の民泊利用の道は閉ざされたままだ。

 田尻さんは外国人だけでなく、医療従事者が同居家族と別々に暮らせる家、家庭内の感染を気にする3世代同居家族が一時的に離れて暮らす家になればと、「近くで疎開」を希望する利用者向けには特典をつけることにした。1週間の予約であれば週割として5%、1カ月であれば月割として10%の値引きを決めた。

「僕の用意でできる部屋はわずかではありますが、同調してくれる人はいると思うので、大きな動きになれば、民泊は満室になるし困っている人を助けることができると思います」

 次々に打ち出した対策のせいか、真っ白だったカレンダーにも少しずつ予約印が入り始めた。口コミが増えたせいか、最近は、金曜の夜から週末に2連泊する日本人カップルの利用も増えてきたという。

「ラブホテルだと予約できないけれど、民泊なら予約ができます。キッチンも付いているので食材を持ち込めば外食せずに済む。近場でゆったり過ごせるせいか、はたまた人目につかずに済むせいか、ワケありカップルには都合がいいようです」。予約簿に書かれた年齢を見ると、明らかな歳の差カップルもいた。女性がかなり年上というケースもあった。

「基地在住米軍人さんと日本女子というケースも結構あります。基地は日本ではないため住所がないと言われるのでいつも対処に困り印象に残っています。眠っている宿泊ニーズはまだまだあると思うので、それを呼び起こしてこのコロナショックを乗り切りたい」と、田尻さんは意気込む。

吉松こころ(HelloNews)
鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。週刊全国賃貸住宅新聞に勤務し、営業デスク、取締役を経て、2015年に独立。不動産業界で起きていることを配信する、株式会社HelloNewsを立ち上げ、不動産・建築業界で生きる人々を取材している。Webメディア「週刊ハローニュース」は毎週木曜更新。上京して22年間で引っ越した回数は18回。

週刊新潮WEB取材班

2020年4月12日掲載

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