米国で見たことは日本でも起こる?「国家非常事態宣言」直後のNY現地ルポ
米国のジョンホプキンス大学の集計によれば、4月10日現在、世界の新型コロナウイルスの感染者総数は168万人を越え、死者は10万2千人に達している。なかでもアメリカは突出して多く、世界全体の約3割をしめて、現在も感染の大爆発が続いている。
全米の感染者数は46万7184人で、死者は1万6736人。なかでも私が住んでいるニューヨーク州の感染者は161807人で、全米の約4割近くを占め、死者は3日間連続して最多を更新し、合計7844人となった。
感染爆発との過酷な戦いを強いられるアメリカの現状と、ここ1カ月余りの急激な変化を振り返りつつ、今後の日本にとって参考になりそうな事例を中心に、アメリカ事情を逐次ご紹介していこうとおもう。
まずは、アメリカの「国家非常事態宣言」が発令された3月13日直後、アメリカ社会はどう変化し、アメリカ人はどう行動したかについて、振り返ってみよう。
それまで、感染者がニューヨーク州を中心に増加しているとはいえ、まだ他人事のような空気が漂っていた。マンハッタンのレストランは半分ほど休業しただけで、五番街を歩く観光客の姿は減らず、街は賑わっていた。
ニューヨーク近郊のウエストチェスター郡ニューロシェル市で、2人の感染者が出たのは3月3日。1人はマンハッタンへ通勤するビジネスマンで、もう1人は教会のミサに参加した弁護士だ。2人はすぐに隔離され、子供が通う小中学校は休校になり、10日になると、同市は「封じ込め区域」に指定され、州兵が出動して貧困家庭のための食糧供給サービスを担った。私が住む小さな町から約10キロしか離れていなかったが、わが町ではまだ呑気に春の到来を楽しんでいた。やがて、わが町も所属するウエストチェスター郡が、ニューヨーク市に次いで、州内で2番目に感染者が多い地域になるなどと、このときはまだ予想もしていなかったのだ。
3月13日、トランプ大統領が「国家非常事態宣言」を発令すると、学校の閉鎖、商店の一斉休業、在宅勤務の指示、不要不急の外出禁止と2週間の自宅待機令(後に4月末まで延長)により、一気に緊張感が高まり、商店街から人の姿が消えた。
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