言いたいことをなんでも言える反町(中川淳一郎)

  • ブックマーク

「モヤモヤする言葉遣い」って、気にし始めると止まらなくなるのですが、私が最近気になって仕方がないのは、「BSフジLIVEプライムニュース」に出演するフジテレビ報道局解説委員長・反町理氏です。

 この番組は、地上波がバカなバラエティだらけの20時台にオンエアされる貴重な報道番組で、とても重宝しています。もちろん放送時間だけでなく、反町氏による政治家や専門家への的確なツッコミと批判もなかなかに痛快なのです。

 しかし、彼の言葉遣いというか口癖が、もう気になりまくっているのです。

 反町氏は韓国の国会議長である文喜相氏に似ています。でも、もっと似ていると思うのは、ノーベル製菓のキャラクター「男梅蔵」。

 ということで、彼がテレビに登場すると「おっ、男梅が出た!」とテンションがあがりますが、問題はここから。共演者の発言に対して、反町氏がシニカルな表情を浮かべ、「なるほど~」と言うのがモヤモヤの始まりです。「お前、今まったく納得してねぇだろ! 本音では、『この嘘つき野郎』とか言いたいんじゃねーの?」と、私は心の中で叫んでしまいます。

 さらに反町氏、人が喋っている時に「うん、うん、うん」と言い続ける癖もある。まず、「うん」じゃなくて「はい」だろう!と思うとともに、なんでそんなに「うん」と言い続けるの?これをビジネス上の会議でやったら絶対にウザいヤツだと思われるよ!なんて心配までしてしまう。

 会議の時に喋っていて、相手に「うん」を連続で言われるとムカつくものです。まるで「その話いいからオレに喋らせろ!」と言われているように感じますから。それを反町氏は公共の電波で容赦なくやる。

 私はこれまでに何度もラジオに出演した経験がありますが、その時にディレクターから注意されたのが、「相槌を言葉で発しないでください」ということです。

 普段の会話であれば、「うん」「はい」「へぇ~」などと、適度に相槌を打つほうがコミュニケーションはスムーズにいきます。でも、ラジオのリスナーからすれば、それは耳障りなノイズになってしまう。話の本筋と関係ない言葉は不要なのです。そこで、「同意している場合は喋っている人を見ながら頷くだけでいいです」と指導されたのです。

 それ以後、ラジオに出る時は一切合いの手を入れないようにしています。

 時々テレビやラジオに出る私のようなへっぽこ編集者は、こうして「いかに先方から嫌われないか」を考え、言動に気を使いますが、一方で、さすが天下のフジテレビ社員・反町氏。相手が誰であろうと「なるほど」「うん、うん、うん」。

 今では反町氏がどのように「なるほど」「うん、うん、うん」を使用するのかを学び、ムカつく人間との打ち合わせの時に相手をイラッとさせるための準備をしています。さらに、家人との会話の中でも、相手をおちょくる時に「なるほど」「うん、うん、うん」を繰り出す。すると「むかつく!」となります。もちろんこれは、反町氏のことを互いに知っているからこそ成立する遊びですが。

 相手をイラつかせる話法を学びたい方は、ぜひともこの番組をご覧ください。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2020年4月9日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。