コロナ鎮圧に成功した台湾 「隔離キット」の充実ぶり

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ホテル隔離者への補助金も

 このほか台北市では4月6日、ホテルで隔離を行った人やその家族に対し、1日あたり上限500台湾ドル(約1800円)の補助金を支払うと発表。3月19日以降のホテル利用者が対象で、最大で7000台湾ドル(約2万5000円、14日間)が支払われる。補助金の対象となるのは、自身が隔離のためにホテルを使った場合や、自宅隔離の際に同居人がホテルを利用した場合などが該当する。

 台北市のホテル相場は下落しており、一般的なビジネスホテルであれば300~500台湾ドル(1200~2000円)程度で宿泊可能。500台湾ドルという金額は、かなり妥当だろう。

 こうした政策を見ると、まずはコロナウイルス制御に全力を尽くし、その後の状況を見ながら生活保障を行うという考え方のほうが、迅速に対応できるように見える。「自粛と補償はセット」は言うまでもないが、日本の場合は補償内容を事前に綿密に詰めようとするあまり、コロナ対策が徹底できなかったのではなかろうか。

 台湾では、IT技術を駆使したマスク配給システムが進化を進めている。2月初旬にオードリー・タンによってマスクの市中在庫を一目で確認できる”マスクマップ”が作成されると、マスク購入を実名制とし、市民全体に平等にマスクを販売すべく供給システムを構築した。

 タン氏は性同一性障害で、男性から女性へと性転換したトランスジェンダー。台湾史上初の中卒、史上最年少となる35歳で閣僚入りし、米雑誌『Foreign Policy』で「世界の頭脳100」に選ばれた逸材だ。ちなみに、日本のIT大臣である竹本直一氏は今年80歳を迎える後期高齢者である。

 3月にはインターネットやスマホアプリ経由でマスクを予約購入できるシステムを開発し、マスク購入の行列を緩和。購入できる店舗を薬局だけでなく大手スーパーなどに拡大し、人々の流れを分散させた。

 こうした政策が功を奏し、4月からはマスクの購入可能枚数が成人は14日間で9枚、児童は14日間で10枚まで引き上げられた(これまでは成人は7日間で3枚、児童は7日間で5枚だった)。マスク不足は、着実に解消されつつある。

 中国・上海に住む筆者の知人も、「マスクはしばらく実名販売制だったが、今は薬局で普通に手に入るようになった」という。日本のマスク不足が解消されるのは、いつになるのだろうか、と嘆息せざるを得ない。嘆息ついでに言うなら、優秀なリーダーを戴く台湾が羨ましい。

西谷格(ライター)
1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞『新潟日報』の記者を経て、フリーランスとして活動。2009~15年まで上海に滞在。著書に『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月10日掲載

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