「志村けんさん」の遺族はなぜ火葬場に行けなかったのか 東京だけの特別な事情とは
3月29日に新型コロナで亡くなった志村けんさんが、都内の斎場で荼毘にふされたのはその2日後のことだった。実兄の知之さんは31日、病院の遺体安置室に行ったが、本人の顔を見ることはできなかったという。感染の危険があるという理由で、病院で斎場に向かう柩を見送り、東京・東村山市の自宅に戻った後、葬儀社の関係者から遺骨を渡されたそうだ。なんとも気の毒な話ではないか。
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厚生労働省が出している「新型コロナウイルスに関するQ&A(関連業者の方向け)」(令和2年4月2日時点)には、こんな記述がある。
《問1 新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体は、24時間以内に火葬しなければならないのですか。
回答 新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体は、24時間以内に火葬することができるとされており、必須ではありません(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第30条第3項、新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令第3条)。感染拡大防止対策上の支障等がない場合には、通常の葬儀の実施など、できる限り遺族の意向等を尊重した取扱をする必要があります。》
「志村さんの場合は、遺族が火葬に立ち会えなかったという点で、ちょっと特異なケースですね」
と解説するのは、一般社団法人「火葬研」の武田至会長である。同会長は火葬場建築家で、火葬場建設・運営のアドバイザーも務める。
「東京23区の火葬場の多くは民間です。人口が集中する都心では、亡くなる人も多いですし、おそらく火葬場も感染対策に配慮した結果でしょう。東京以外の火葬場だと、新型コロナの遺族も火葬に立ち会っています。ただし、他の会葬者のことも考慮して、火葬はその日の一番最後に行っています。火葬にあたっては、最後に柩を開けることはできませんが、炉に入れた後に焼香・読経するなど、感染対策を行っています。会葬者が収骨も行っています。遺族からすれば、収骨をしたことで、やっと死を受け入れることができる。志村さんの遺族はそれができず、本当にお気の毒でした」
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