【コロナ禍】外出制限で休業補償を瞬く間に決めたフランス やはり感じる日本との差

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即時の事業支援策

 大統領は12日の会見で「苦境に立たされることが予想される中小企業や自営業者、フリーランス等に対して支援をしていく」と述べた通り、様々な補償を打ち出し、すでに実行しています。具体的に見てみましょう。

・1500ユーロの定額支援
 直近年度売上高が100万ユーロ(約1億1700万円)未満、従業員10人以下の小規模企業、個人事業主、フリーランスが対象。コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた、または昨年同月より50%以上売上が落ちていることが条件です。また債務支払いが困難などの状況にあれば更に2000ユーロ(約23万4000円)の支援も用意されています。この支援金は非課税で、税務署のサイトなどから申請できます。

・法人税等の納税延期
 法人税、社会保険料の支払いの延期が認められています。また付加価値税の払い戻しも受けることができます。オンライン、メール、電話等で申請できます。
 すべての法人や個人事業主、フリーランスなどが対象で、規模、事業形態により申請方法が違います。

・家賃、水道・光熱費の支払い延期
 政府は商業施設や不動産会社に対して、家賃の請求を一時停止するように要請しています。審査により約3億5000万ユーロ(約410億円)の住宅連帯基金から支援を受けられるケースもあります。

 貸主に支払い延期を申し込んで合意に至らない場合は、「未払い賃料SOS」というフリーダイヤルが設置されていて、利用可能な支援等の法的アドバイスをもらえます。

 水道、ガス、電気等は供給会社に支払い延期依頼の連絡をすることで、支払いの延期ができます。

・3000億ユーロ(約35兆円)の融資保証
 企業向け銀行融資を、政府が最高3000億ユーロまで保証するシステムです。事業形態や企業の規模を問わずに申請することができ、初年度の返済は不要です。
 また既に受けている銀行融資も6か月の支払い猶予が認められています。
 大企業に関しては、2020年中に株主配当を行わないこと、株を買い戻さないことが条件とされています。

・給与の84%を補償
 フランスでは、企業が事業活動を縮小するために従業員を一時的に休業させる「部分的失業」制度があります。その際、企業は一定割合の給与を支払わなければいけません。コロナウイルス危機で休業を余儀なくされた場合、企業は従業員に額面の70%(手取り額の約84%)を支払いますが、国から同額を補償されます。

 ただし、スミックとよばれる最低賃金で働いている従業員は100%が補償されます。

 補償の期限は決められていませんが、政府から現在の外出制限、店舗閉鎖の指示が続く限り支払われるようです。実際は国からの補償と合わせて企業が残りの約16%を従業員に支払い、満額を受け取れるようにしているケースもあります。

 具体的な申請方法がわからず不安に思う経営者も少なくありませんが、随時政府サイトで申請方法などの詳細な情報が更新されています。

 知人のフランス人経営者に聞くと、「(補償は)ないよりはもちろん良いよね」という人もいれば「1500ユーロは大した金額ではないし、自分たちは給与から税金や失業保険をかなり払っているんだから当然」と受け止めている人もいます。
また、パリで2軒目の飲食店をオープンしたばかりの日本人経営者からは「支払いが猶予されても、数か月後には支払わなければいけないので、(経営)再開のめどが立たないうちは不安」など様々な意見があります。

これからも期待される政府からの支援

 さらに、コロナウイルス危機と闘う最前線にいる医療従事者、国民の生活に必要な食料を販売するスーパーマーケットの従業員には1000~2000ユーロ(約11万7000円~23万4000円)のボーナスも提案されています。

 これは大統領自らが会見で言及し、労働大臣からも提案されています。財源や実施時期は確定していませんが、他の支援策と同じように今後詳細が発表されると思われます。

 私の周囲のフランスの友人や知人の間では、外出制限や仕事ができなくなったことで、今のところ大きな混乱や政府に対する不満の声は聞かれません。

 おそらく、「仕事ができなくなったら、この先どうなるんだろう」と心配する前に「80%くらいの補償があるらしい、家賃も払わずにすむ(実際は免除ではなく、支払いの延期)かもしれない」などという情報が出回り、政府も法制整備をした上で詳細な情報を随時発信していることが大きく関係しているのではないでしょうか。
 私自身、フランス政府の政策決定や法整備には、スピード感があり、「対策を怠っていない」という印象を受けています。

 労働者の危機は国の危機――。フランス政府は、平時からこういう認識があるせいで、素早く充実した補償や支援策を打ち出しています。第一線で闘う人への支援など、むしろ国民の不安が大きくなる前に先回りして策を出している印象もあります。

コロナウイルス危機の収束に向けて

 小池知事は会見で「(コロナウイルスの)影響を受けている中小企業等に関して国に更なる強力な支援を要望して参ります」、「都独自の対策も考えて参ります」と発言しているものの、会見では具体策は聞かれませんでした。

 世界中でコロナウイルスは拡大し続け、ヨーロッパ、アメリカは予断を許さない状況です。国や地域により影響は違いますが、国民を安心させ、拡大終息に向けて取り組むのが政府の役目ではないでしょうか。

 日本も一刻も早く政府主導で国民、企業に補償を用意し、それぞれの立場で協力、団結して感染拡大を食い止めてほしいです。

(日本円は1ユーロ117円で計算)

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月7日掲載

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