“帝国”オスカープロモーション崩壊へ 創業者と「渦中の娘婿」の言い分
産みの苦しみか…
財務担当役員を兼ねるようになっても、苦労は続いた。
「そのタイミングで、大手の監査法人などで勤務経験のある会計士の方に顧問をお願いしたのですが、着任されてすぐ、“これは経理ではなく、事務レベルです”と言われてしまいました。その中で不透明な接待費が見つかりました。芸能事務所は人間関係を通じて仕事を取ってくる部分が多いから、事前に申請を受ければ、キチンと経費を出しています。“接待費で落とせなくなった”と言う社員がいるのかもしれませんが、接待費を使わなくても、結果を出している社員の方もいるのです」
古賀氏の秘書ら社員の大量遁走については?
「秘書の退社に私は関わっていません。経費の不正に関しては、彼が辞めると決まった後で発覚しています。私のパワハラが原因で四十数名の社員が辞めたと報じられていますが、その中には一度も話したことがないような若い社員の方もいます。なぜ私が悪者扱いされるのか。納得がいかなければ、財務担当役員の私にキチンと説明を求めればよいと思うんです。なぜそれをしないのか」
さらには、
「タレントや社員が辞めている理由に経費の問題があるのなら、それを説明していない管理職なり役員に責任があるのではないでしょうか。なぜ悪く言われるのか。社内で私のことを疎ましく思っている人間が吹聴しているのではないでしょうか」
なぜ?なぜ?が続く弁明が明らかにしたのは、社員らとの埋めがたい溝だった。
「創業者が偉大であればあるほど、後継者というのは難しいんですよ。四半世紀前に米国で出版された『ビジョナリー・カンパニー』に、繁栄がずっと続くのはどんな会社かというのを調べた結果が載っています。主として、CEOが定期的に交代している、主力商品が定期的に交代しているということです」
こう解説するのは、経済アナリストの森永卓郎氏だ。
「カリスマが一代で築いた会社によくあることですが、創業者は理念を持っていて慕われているのに、2代目や外から来た人間が、“理念もなく具体的な指示を出そうとしたり、自分の思うように行動させようとする”のは最悪のパターンです。結果、人が離れていきます。オスカーには古賀さんが作り上げた『美の総合商社』という理念があるわけですが、外から来た娘婿の方にはそれがないのではないでしょうか」
ただでさえ外様は手綱捌きに難渋するのに、加えて血や愛が絡んでいる点がオスカー騒動を厄介にさせているのだ。
ある大手芸能事務所幹部の話が示唆に富む。
「体制が新しくなるために必要な産みの苦しみみたいなもので、娘婿は変革者なのかもしれない。もっとも、このままダメになってしまう可能性だってあると思いますけれど。だって古賀さんが創り上げた会社の魅力がなくなり、組織を支えるベテランや中堅が去っているんですから」
米倉は契約更改を拒否。そして3月24日、オスカーは「米倉退所」を発表することになったのである。
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