【コロナ禍】海外の刑務所は「3つの密」で修羅場……日本の刑務所は?法務省に聞いた

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ウイルスの“培養地”

 一方、感染者がいなくても、感染を恐れて刑務所内で暴動が起こったケースもある。

 3月29日、タイの東北部ブリラム県の刑務所で、新型コロナが所内で発生したという噂が引き金となって、約100人の受刑者が暴動を起こした。受刑者は食堂や面会室に火を放ち、10人が脱獄。警察や軍が鎮圧にあたり、脱獄者のうち9人を拘束。受刑者6人が負傷したという。この刑務所は2200人の受刑者を収容しているが、終身刑を言い渡された受刑者がウイルスの噂を広めて扇動したという。タイでは29日現在で1388人が新型コロナウイルスに感染し、7人が死亡している。タイでは別の刑務所で受刑者の感染が確認されているが、暴動が起きた刑務所では感染者は確認されていないという。

 南米コロンビアの刑務所でも暴動が起こった。首都ボゴダのラ・モデロ刑務所で、3月21日夜、受刑者が刑務所内の衛星環境の改善や新型コロナウイルス対策を進めるように要求したデモが暴動に変わったという。刑務所で火災が発生し、受刑者は脱獄を試みた。この暴動で受刑者23人が死亡、83人が負傷した。刑務官7人も負傷し、うち2人が重傷。コロンビアでは、さまざまな刑務所で同様の暴動が起こっているという。

 新型コロナウイルスにとって刑務所は、まさにウイルスの“培養地”と言っていい。

 ならば、日本の刑務所は大丈夫か?

「今のところ、刑務所や少年院、鑑別所の受刑者や職員に、新型コロナウイルスの感染者は一人も出ていません」

 と説明するのは、法務省矯正局の矯正医療管理官である。

「刑務所で感染が出ないように、いくつも対策を講じています。まず、受刑者や職員全員にマスクを配布し、着用するよう指示しています。それから手洗い、うがい、検温を義務付けています。ドアノブやバリアフリーの手すりなど、普段、手に触れるようなところは消毒を徹底しています」

 特に力を入れているのは、刑務所内にウイルスを侵入させないことだという。

「刑が確定して、新しく刑務所に入ってくる人たちに対して、まず徹底的に検査を行います。拘置所や警察の留置施設から刑務所に移る場合は、事前に検査ができますので、身体情報は入手できます。また、在宅裁判などを経て、社会から直接、刑務所に入ってくる受刑者には、検温や身体検査を行った後、新型コロナウイルスの潜伏期間である14日間、他の受刑者から隔離します」

 受刑者への面会や、刑務所の出入り業者にもマスクの直用を義務付けているという。

「面会人や出入り業者に対して事前に職員が質問し、熱があるとか体調が悪い場合は、刑務所へ入るのをお断りしています。職員から感染が広がるケースが多いので、職員が少しでも熱や体調不良があれば出勤停止、または刑務所以外の部署に配置換えを行います。また、これは各施設によって異なりますが、食堂など人が密集する場所では、スペースがあれば、受刑者同士が離れるようにしています。また、刑務所の所轄の保健所とは良好な関係を築き、何かあれば保険所に相談や助言を求めることにしています。受刑者や職員にはウイルスへの危機感がありますから、やれることはすべて徹底してやっています」

週刊新潮WEB取材班

2020年4月7日掲載

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