新型肺炎による五輪延期、追加コストは 頭を抱える協賛企業と選手たち
中国発の疫禍によって、延期を余儀なくされた東京五輪。国を挙げての一大イベントゆえ、当然ながら延期に伴うコストもリスクもケタ違い。選手はもちろんのこと、スポンサーまでもが頭を抱えているのだ。
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ようやく〈2021年7月23日開幕〉という見通しが立った東京五輪だが、問題はここからである。
関西大学名誉教授(経済学)の宮本勝浩氏は次のようにコスト増を試算する。
「五輪延期に伴う経済的損失には2種類あります。ひとつは延期によって新たに生じる経費。もうひとつは今年の夏に五輪が開催されなかったことで失われた経済効果です」
晴海の選手村は、今年1月から年末まで東京都が42億円で借りているが、延期となれば当然、追加の賃料が発生する。
「さらに管理費や清掃代、光熱費、警備費用も必要になります。また、国立競技場は1年間使わなくても維持費に24億円かかる。延期によって新たに押さえなければならない競技施設の費用を合わせると225億円に達します。また、オリンピックとパラリンピックの種目のうち5~6割はこれから選考を行わなければならないはず。となれば、国内大会を開催したり、国際大会に選手を派遣する必要がある。会場の確保や選手の渡航費などで3900億円がかかる計算です」(同)
他にも、組織委で働く職員の給料に、各競技団体が国際会議を開いたり、再びボランティアを募るための諸経費を加味すれば、
「総額で4225億円の新たな経費が生じることになると思います」(同)
続けて、失った“利益”に目を転じると、
「コロナ騒動がなければ、大会の開幕前から各国の選手団が事前合宿で日本を訪れる予定でした。が、延期によってウェルカムパーティーや各種イベントも吹っ飛んでしまい、合宿地に落ちるお金もゼロに。もちろん、五輪前後に訪日するはずだった外国人観光客も見込めず、私の試算では2183億円の経済効果が失われたことになります」(同)
〆て6408億円の損失というワケだ。
無論、マイナスが出れば補填する必要がある。そのシワ寄せに頭を悩ませるのは、すでに3300億円以上の協賛金を支払ったスポンサー企業だ。
現在の契約期間は今年の12月31日までだが、今後、延期分のコストを求められる可能性は高い。100億~200億円とされるスポンサー料を支払った“ゴールドパートナー”のアサヒビールは、
「まだ延期の報告を受けただけで、今後の契約について具体的なことは何も決まっていません。チケットキャンペーンも手掛けていますが、応募者の方々にどう対応していくかも検討する必要があるかと」(広報)
スポンサー料が60億円とされる“オフィシャルパートナー”のエアウィーヴの担当者はこう語る。
「すでに選手村へのベッドの提供は進めていますし、契約を打ち切ることはないです。ただ、理想を言えば、このまま追加の負担がなければありがたい。そこは提示されてからお願いするしかありませんが……」
他方、あるスポンサー企業が胸中を明かすには、
「五輪キャンペーンが商品の売り上げに繋がるスポンサー企業はまだマシ。そうでない場合は企業のイメージアップのために参加しているだけです。それなのに追加の費用負担を求められるなんて冗談じゃないですよ。ただ、ここで降りたら明らかにイメージダウンなので逃げることもできません……。いまは組織委から奉加帳が届くのをビクビクしながら待っています」
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