首都「ロックダウン」で何が起こるか 合理性なき封鎖、日本ならば経済との両立可能
ゴーストタウンと化した欧米の映像を、もはや人ごとのように眺めてはいられないのか。小池百合子都知事は、首都のロックダウンに言及しはじめたが、パフォーマンスに、惑わされてはいけない。
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お彼岸の3連休、桜の開花が進み、都内各地は多くの人出で賑わった。自粛疲れによる気の緩みが指摘されたが、小池都知事が初めて首都封鎖、すなわち「ロックダウン」の可能性に言及したのは、連休が明けた3月23日のことだった。
さらに2日後には、都内の新規感染者が40人台に急増したのを受け、「このままではロックダウンを招く」と警告し、週末の不要不急の外出自粛と、平日の在宅勤務などを呼びかけたのは、ご存じの通り。だが、都政担当記者は呆れて言う。
「五輪が今年開催される可能性があるうちは、東京のイメージ低下を恐れ、新型コロナウイルスについてダンマリを決め込み、延期が決定的になるや否や、ロックダウンの可能性に言及するという姿勢は、到底、都民本位ではありません」
事実、3月26日、総理官邸で安倍総理と会談した際、小池都知事は「(ロックダウンの前提となる)緊急事態宣言を出してほしい」と頼んだという。だが、政治部記者は、総理周辺からロックダウンに肯定的な声は聞こえないと、こう話す。
「ロックダウンが行われるとすれば、総理が新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、緊急事態宣言を出したのを受け、都知事が具体的な行動自粛を要請するという流れになる。しかし、菅官房長官は“人口比で考えれば、東京で1日に数百人の感染者が出ても、欧米にくらべればたいしたことない”との意見。加藤厚労大臣も“影響が大きすぎる”と否定的です」
なぜかと言えば、
「小池都知事は官邸にも政府にも一切相談なく、外出自粛を求めました。五輪への影響を恐れて、強い措置に踏み切れなかった都知事が、いま積極策に出ているのは、7月の知事選に向けてのパフォーマンスの面がある。菅さんらはそれを見抜いているから、一歩引いているのです」
とはいえ都知事はやる気満々。首都は相変わらずロックダウンの危機にあるが、そんなことをする意味があるのか。国際医療福祉大学の松本哲哉教授は、
「ワクチンも治療薬もないので、人から人へと感染が広がるのを防がないと収まりません。密閉、密集、密接の3密を避けるのは大事ですが、それだけで感染を防ぐのは難しい。諸外国のように人を家から出さないのが、効果を上げるうえで一番手っ取り早く、数字に表れやすいと思います」
と言いつつ、次のような懸念も表明する。
「封鎖が長く続くとお年寄りは、外に出られずに運動能力がかなり落ちてしまいます。認知症が進むこともあるし、メンタル面で弊害が生じることもある。加えて、経済面でダメージを受けます。封鎖を徹底するほど影響が大きいので、行うにしてもどうバランスをとるかが難しいと思います」
経済への影響については、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、こう試算する。
「全国の自粛が半年続けばGDPは4・4兆円減少し、1年で8・7兆円のマイナスと計算されます。1都3県のロックダウンとなると1週間で1・4兆円、2週間で2・9兆円、1カ月で5・8兆円減ることに。電気、ガス、水道などライフライン産業以外のダメージは避けられません。リーマンショックの際には、失業者が年間110万人以上増えましたが、政府の対応が遅れれば、それを超える可能性がある。リーマンのときは大きな製造業がダメージを受けたのに対し、今回は観光関連、特に、インバウンドで生き返った中小のサービス関連産業が大打撃を受けます。それらは体力がないところもあり、迅速な支援が必要です」
ひとたびロックダウンとなれば、感染者の減少と引き換えに、コロナ自殺者が急増しかねない、ということであろう。
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