たるみ・ほうれい線が消える小顔マッサージ(1) 重力と闘う「形状記憶」
人類の美との長い闘いの歴史に終止符が打たれるのだろうか。ヒアルロン酸注射や糸リフトから卒業し、顎関節症の悩みも払拭されたという報告もある「形状記憶」で重力に抗う。整形はいらない! たるみやほうれい線が消える小顔マッサージの全貌を詳らかにする。
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美にも求道者がいる。
東京・西麻布。飲食店などが入る雑居ビルのこぢんまりとした一室で施術を行うのが、メイクアップアーティストとして活動してきたCHIDO(チド)さん(59)だ。道というからには他の道同様に厳しく険しい。小顔、シワ取り、リフトアップ、若返りなどを謳う技術はかねてあったが、その効果が長続きしない、あるいは、加齢でより悪い結果となる課題を抱えてきた。それをどう解決するのかは人類の永遠の懸案でもある。
凸凹した脂肪を平らな面になるように一つ一つ細かく丁寧に繋げていき、それら脂肪を最終的に頭頂部の百会(ひゃくえ)に至るように持ってきて、形状記憶させる――。
彼女のアプローチをざっくり言えばそうなる。35歳時の彼女(掲載写真)はご覧の通りの顔かたちで、整形したと言われても不思議ではない。ここに至るまでの経緯を述懐してもらおう。
「メイクアップアーティストとして、鼻を高く見せたり、キレイな涙袋を強調したり、すっとしたフェイスラインを出したり、そしてどれだけツルッとした美しく華やかな肌感をつくるかということにこだわってきました。これは素肌づくり、ベースメイクと言われるものです。目の周りは劣化しやすくてたるみやすい。その結果、クマができます。ニキビでもシワでもたくさんの色のファンデーションを駆使して消していく。もっとも、これらはあくまでもゴマカシの技術です。“写真はレタッチ(修整)をかけますから”という言葉が現場では当然のように飛び交っていました」
そうではなくて、
「ベースメイクにこだわりのある私には物足りず、もっと根本的な部分からお肌をキレイにすることで、メイクも映えるのではないかと考えたのです。自然光であれ何であれ、おでこや鼻先、頬骨など、顔の一番高い部分に光は当たります。若い人たちの場合、お肌が張っていますから、美しく丸い光が顔に反射するだけです。一方で、お肌が劣化するにつれ、表面に段差が出てきます。段差に光が当たれば屈折しますし、たるみが出てくると、若い時よりも低い位置に光が当たることになります。実はこれが老けて見える原因なんですね。“若く見えるようにしてね”などと担当する女優さんに言われてきましたけれど、そう簡単にはいきません」
試行錯誤が始まった。
「私自身を実験台としてマッサージや指圧、骨格矯正、カイロプラクティックなどにトライし、確かにキレイにはなりました。しかし、お肌のトリートメント効果も小顔矯正も一時的なものに留まるばかり。整形やヒアルロン酸注射やボトックス注射は試しませんでしたが、そういう手もあるでしょう。ただ、直した部分が老化すれば元に戻ってしまいます。一時的であったり繰り返さなければならないのが前提なら、その場しのぎのメイクアップとあまり変わらないですよね。そこで、オールハンドという安全な方法で、自由自在に脂肪を移動させ、キレイになった後もそれを形状記憶できて簡単に戻らないということを最終目標に掲げることにしたのです」
俄かには信じがたいものだが、骨格や筋肉、脂肪の流れなどを勉強しながら、施術の基本形は固まっていく。
「もっとも、肝心の形状記憶についてなかなかうまくいかず試行錯誤は続きます。で、結局、たるんだ皮膚や無駄な脂肪を集めて頭頂部へ持っていき“ロック”するという技術を身につけました。両耳と頭頂部を通るラインとそれに対して垂直に交わるラインにそれら脂肪などを集め、自律神経と直結する百会に繋げてホチキスで止めてしまう感覚です。これに加えて短時間のセルフケア法も考案しました」
西麻布のサロンを訪ねるとまず、カウンセリングをしてどういう顔になりたいかを定める。ジジ・ハディッドやエミリー・ラタコウスキー、あるいは石原さとみにはなれないが、「昔の自分」に戻ることは可能だという。完成まで最低5回は施術を受ける必要があるが、その間もセルフケア法を実践していれば、次の施術まで状態を維持することができる(セルフケアのやり方については次回にて)。施術料金は40~60分で3万円(税別)。高いか否か?
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