驚愕「がん見落とし」率のPET検査 減らすべきは国を破綻させる「ムダな医療」

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共同意思決定

 以上、ここまで紹介した以外にも、「無駄な医療」の項目はまだまだある。減らせる「無駄」はたくさんあるのだ。

 改めて、不必要な薬の処方や検診はなぜ行われるのか。

 医療介入をすればするほど出る「利益」。あるいは、「安心」「予防」「念のために」処方をするという「防衛医療」。出来る限りの処置をしてデータを取りたいという「アカデミック・インタレスト」。これまでのルーティンに囚われた「経験主義」。製薬会社や検査会社の甘い「誘惑」――これら医師側の“動機”に加え、患者にも医師には何かしてもらいたいというリクエストがある。両者が作用し合って「無駄」が生まれている。

「『Choosing Wisely』とは、医師と患者の適正な対話を進めるキャンペーンとも言えるのです」

 と言うのは、「Choosing Wisely Japan」の代表で、東光会七条診療所の小泉俊三所長である。

「ともすれば、これまでの医師と患者との関係は、医師が自らの考えを頭ごなしに伝え、患者はそれに従う、というものになりがちでした。しかし、確かに医師は専門家ではありますが、患者さんには患者さんなりの“健康”や“死”についての考え方があるはず。専門家の考え通りにやらないといけない、というのは医師の思い上がりです」

 アメリカの「Choosing Wisely」では、医者にかかる際、患者はカードを持参しようと呼びかけるキャンペーンがあるという。そこにはその処方や検査について、「本当に必要か」「しなければどうなるのか」「リスクや副作用はどんなものがあるのか」「費用はいくらか」の四つの質問が書かれている。医師に検査や治療を勧められた際、勇気を持ってこれらの質問をしようというのである。

「そこでムッとしたり、怒ったりするようなら、その医者は避けた方が良い。医師は患者と十分な対話をする。患者は納得した上で、医師と共に方針を決定していく。医療の現場における共同意思決定という考え方がこれからの医療の基本であり、この運動の根底にあるのです」(同)

 すなわち、医師だけでなく患者各々にも責任がある。

 戦後日本が作り上げた「国民皆保険」というユートピア。しかし、それが医療崩壊と財政破綻の危機を招いている皮肉。

 医療費を巡る問いは、医療関係者のみならず、まさに我々一人一人にも回答を迫る重い宿題なのである。

週刊新潮 2020年4月2日号掲載

特集「国を破綻させる『ムダな医療』後篇」より

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