2億円の新薬も保険適用…国を破綻させる「ムダな医療」 抗生物質の6割は不必要!?

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国を破綻させる「ムダな医療」(1/4)

 効果は抜群。しかし、1回の点滴で実に2億円という新薬が保険適用されることになった。医学の進歩は朗報。しかし、問題は「カネ」である。医療費は膨張の一途を辿り、国家財政も赤字が続き……。新薬を活かすためにも、まずは「ムダな医療」にメスを入れよ。(以下は「週刊新潮」3月26日号掲載時点の情報です)

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 医療と経済について語られる際によく用いられる譬えが「姥捨て山」である。年老いた民を養う余裕がない貧しい集落では、ある一定の年齢に達し、働けなくなると、村人は山奥に置き去りにされ、死を迎える“掟”がある、という伝説だ。

 日本が戦後、長らく採ってきた医療制度は「国民皆保険」。加えて、医療費の支払いが一定程度を超えると払い戻される「高額療養費制度」もある。これによって、例えば月収27万円未満の患者は月の自己負担額の上限が6万円弱となる。右肩上がりの税収、家計収入を背景に、老いも若きも、貧しい者も富める者も、万人が安価で高度な医療を受けられる。まさに「ユートピア」である。しかし、急速な高齢化と医療の高度化で、そのモデルに疑問符が突き付けられている。医療費は膨張する一方で、国の財政赤字も増え、このままでは公的保険は崩壊。お年寄りや貧困層が医療の枠組みから外されかねない「姥捨て山」「ディストピア」が出現するのか――。

 そんな問いを改めて思い起こさせたのが、2月末に報道された「世界一高い薬」の保険適用である。「脊髄性筋萎縮症」(SMA)の治療薬「ゾルゲンスマ」。SMAは、遺伝子異常で運動神経細胞が減り、筋力が低下する難病だ。最も重いタイプでは、呼吸の補助がないと2歳までにほとんどが死亡するという。しかし、この新薬を点滴で1回投与するだけで、多くの生存が可能となるのである。注目すべきは、2億3千万円とされるその値段。1回の治療にかかる費用としては、世界最高額と言われる。国内での販売価格は未定だが、高額が予想される。が、「国民皆保険」「高額療養費制度」のおかげで、患者サイドの負担はごくわずかで済む。残りは、公費と保険料で賄うことになる。

 もっとも、この難病は10万人に1~2人の発症割合。年間およそ20人程度、現在の国内での患者数も1400人ほどだ。これで幼い命が救えるのであれば、適用に異論はないだろう。

 が、こうした高額の薬の問題は他にも目白押しで、昨年には、白血病やリンパ腫の治療薬「キムリア」の保険適用が始まっている。薬価は1患者当たり3300万円。また、肺がんに効果抜群で、本庶佑・京大特別教授が開発の立役者としてノーベル賞を受賞した「オプジーボ」。この免疫チェックポイント阻害薬も当初、年間3500万円もかかるとされた。肺がんは国内で患者数が10万人を超えることから、大いに議論を呼んだのは記憶に新しい。

「2030年には、高齢化率が31%となります」

 と述べるのは、国際医療福祉大学の高橋泰教授(医療経営)。

「日本の医療費は増加の一途を辿り、昨年度の一般会計歳出のうち、34%は社会保障費が占めています。それに加えて、ゾルゲンスマやオプジーボのように、高額薬品が相次いで保険適用されれば、国の財政を圧迫するのは必至です」

 最新の2017年度の統計で、日本の国民医療費は約43兆円。負担割合は、公費・保険料・患者負担でおよそ4:5:1の割合である。ここ10年で9兆円増加し、これを補うために、消費税が段階的に上げられているだけでなく、現在、後期高齢者(75歳以上)について、窓口負担を上げる案が政府で検討中である。

 打ち出の小槌はないから負担増は止むを得ない。

 が、その前に出来ること、やるべきことはないのだろうか――。

「超高齢化によって、社会保障費は爆発的に伸びています」

 とは、総合診療医で群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師。

「加えて、医療は高度化し、特殊なテクノロジーを用いた治療が増えている。これらには超高額の費用がかかります。人の命に関わることですから効果があるものは当然行うべき。ですから、逆に不必要な医療、価値のない医療介入は出来るだけ減らし、資源を高度医療に集中すべきなのです」

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