コロナ対策で「文在寅」の人気急上昇 選挙を控え「韓国すごいぞ!」と国民を“洗脳”
安倍は文在寅に負けて嫉妬
左派系紙のハンギョレは政府のプロパガンダに全面的に乗っています。「『韓国型防疫モデル』全世界と共有」(3月17日、日本語版)、「韓国に防御壁築いた国々が『韓国の新型コロナ対応モデルから学ぼう』」(3月21日、日本語版)などを掲載、連日のように「韓国の積極的な検査体制が世界の模範になった」と強調しました。
極めつけは「トランプ(Donald Trump)大統領の支援要請」でした。青瓦台は3月24日、同日夜の米韓首脳電話協議で「文在寅大統領がトランプ大統領から医療機器を支援して欲しいと頼まれた」と発表しました。
3月25日、韓国各紙は一斉に大きく報じました。中央日報の「真夜中に緊急に文大統領と連絡したトランプ大統領『医療装備を支援してほしい』」(日本語版)、ハンギョレの「文大統領『トランプ大統領も我が診断キット支援を要請』」(韓国語版)などです。
左派系のYouTubeチャンネルは「ドナルドもすがる文大統領のリーダーシップ!」(3月25日、韓国語)で「トランプは文在寅大統領の助けなしには困難な状況だ」「安倍は文在寅大統領に負けて嫉妬している」「文在寅政権の人気爆発 大韓民国ブランド急上昇」などと、大いに盛り上げました。
保守系紙の朝鮮日報は「このままでは『文在寅は外交の天才』という空気を作られる」と危惧したのでしょう、翌3月26日、「『新型肺炎で世界が文を求める』という青瓦台の自画自賛は事実か?」(韓国語版)を載せました。ポイントは以下です。
・トランプ大統領は文大統領と23分間、電話で話した後、安倍首相と40分間通話している。
・米国務省は世界各国で医薬品や機器の調達に動いている。韓国だけに求めたのではない。
・ホワイトハウスはトランプ大統領が文大統領に支援を要請したことの確認を拒否している。
ただ、朝鮮日報の反撃が有効かは疑問です。嘘であろうと「我が国はすごい!」という話を韓国人は聞きたがるからです。
「日本はだめだ」「安倍が悪い」
――なぜ、「韓国では全員検査」との誤った認識が日本で広がったのでしょうか。
鈴置:韓国紙が「検査件数が多い我が国はすごいぞ!」と自画自賛。日本語のツイッターで「日本よりも優れた韓国」を誇る韓国人も登場しました(「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は『文在寅政権の無能、無策』と総攻撃」参照)。
一方、日本には、何かにつけ「日本はだめだ」「安倍が悪い」と言いたい人たちがいる。彼らがそれを見て「韓国がちゃんと検査できるのに日本はやっていない」と大声で叫んだ――という構図です。
――なんと言われようと、日本では検査件数が増えません。
鈴置:新たな感染者が見つかれば、その周辺は検査するでしょう。もともと、日本政府は希望者すべてを検査するつもりはありません。肺炎の症状もない人にまで検査すれば、実施する医療機関の負担が増えるからです。
でも、そんな日本が韓国人は憎らしい。「検査大国である韓国」を無視してように見えるからです。韓国政府が「日本の検査体制は間違っている」と決め付けたのも、そんな心情からでしょう。
中央日報の「韓国政府『日本の新型肺炎、積極的な患者発見不十分』と評価」(3月9日、日本語版)を引用します。
・「日本の場合、積極的な患者発見が不十分で、患者発生に対する疫学的関連性把握が不足し市中感染が懸念されている状況だ」。
・中央災害安全対策本部の金剛立(キム・ガンリプ)第1総括調整官(保健福祉部次官)は9日午前に開かれた定例会見でこのように話した。
中央災害安全対策本部・定例会見(3月9日)の報道資料にはこのくだりはないので、記者からの質問に答えたものと思われます。
ただ、これだけの言質を得れば十分。中央日報は「日本は韓国と比べ劣っている」との記事に仕立て上げたのです。となると、東京特派員もさらに付加価値を付けねばなりません。
感染者を隠すために検査しない日本
――「付加価値」ですか!
鈴置:同紙のユン・ソリョン特派員は「【グローバルアイ】新型コロナウイルス感染症が鑑定する政府の信頼性」(3月20日、日本語版)を書きました。「日本政府は感染者数を抑えるために検査を制限している」との内容です。
・(日本で)20代の女性が2月末に発熱と咳の症状が出て病院を訪れたという。レントゲン検査で肺炎の症状はなく、薬を処方されて帰宅した。
・しかし、症状が好転せず、それから2度病院を訪れた。37度後半の熱が10日以上続くと、医師は新型コロナウイルス感染症を疑い、政府の指示に基づいて「帰国者・接触者相談センター」に電話をかけて検査を依頼した。
・しかし、検査の要請は拒否された。「(肺炎の症状がないから)緊急ではない」というのが理由だった。この医師の説明によると、本人が濃厚接触者の疑いがあって申告しても検査を受けるにはほど遠い。
・医師は「日本政府の説明と現場はあまりにも異なる」と嘆いた。爆発的感染が発生していないからといって防疫に成功したとは言えない。あえて陰謀説まで出さなくても、多くの日本国民は現在発表されている感染者数は真実ではないと信じている。
――「日本は劣っている!」キャンペーンですね。
鈴置:本気で書いている人もいますし、「キャンペーンに乗らないと東京特派員として生き残れない」と打ち明ける人もいます。もちろんソウル本社からこんな記事を求められても断る特派員もごく少数ですがいました。でも、そんな骨のある人は減りました。
韓国人の名誉のために付記しますと、この記事の韓国語版の読者の書き込み11本中(現在は一部削除)、2本がこの記事を批判しました。以下です。
・(新型肺炎の)感染者数は操作可能だが、死者はそうはいかない。(日本で)大規模感染が起きているなら死亡者が(もっと)出ているはずだ。
・日本にいながらこんな内容のない記事を書くなんて。もっと日本社会を説明できる記事を書けないのか。
「韓国はすごいぞ!日本は劣っている!」とろくな根拠もなしに書く自国メディアを、恥ずかしく思う韓国人も少しはいるのです。
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