遠藤健(SOMPOケア代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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「眠りSCAN」の実力

佐藤 ただ離職率が低くなっても、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、75歳以上が2200万人超になり、介護人材は34万人も不足するとされています。

遠藤 その10年後の2035年には70万人以上不足するという試算もありますね。それも介護に従事する人が増えていくという前提での数字です。

佐藤 それはもう実現不可能な数字ではないですか。

遠藤 ええ。だから、いまは施設で1人の介護職員に3人の入居者という配置基準ですが、これを1対4、1対5で介護できるようにしていかなければなりません。そのためにICTやデジタル、AIなどを使っていくことを模索しているところです。

佐藤 事務の合理化というのは想像がつきますが、介護現場では具体的にどのようにデジタル機器を活用していくのですか。

遠藤 いま一番効果的だなと考えているのは、パラマウントベッドが開発した「眠りSCAN」というセンサーですね。

佐藤 眠りを測るのですか。

遠藤 そうです。ベッドの下に敷くだけですが、それで高齢者の方々が起きているか、寝ているか、あるいは浅い眠りなのか、熟睡しているのかがわかります。またベッド上での体動や、起き上がっている、ベッドから離れているということもわかる。

佐藤 それは画期的ですね。

遠藤 そうすると、夜間、排泄の介助に行くのも、起きているときに行けばいい。わざわざ起こさなくてすみます。だから夜勤の職員が、非常に助かる。

佐藤 なるほど。

遠藤 さらに心拍数や呼吸の状態などバイタルデータも測れます。眠りと心拍数と呼吸のデータが1週間、1カ月と、モバイル端末にグラフで出てくる。その入居者がいつ起きていて、いつ眠っているかなど、眠りのパターンがわかります。つまり、介助するのに適切な時間が見えてくる。

佐藤 それはいい。認知症になったら、自分の状態がきちんと申告できなくなりますからね。眠ることができない、といっても実際は眠れているとか。しかも健康管理に大きな役割を果たしますね。

遠藤 これはもう完成していて、今年と来年で、全施設のすべてのベッドに入れる予定です。

佐藤 これだけでもかなり現場は変化するでしょう。

遠藤 もうひとつ期待しているのは、お風呂です。当社の施設にはお風呂がついているタイプの部屋があります。比較的元気な方が入居しますが、そういう方でも溺れたり、心臓発作を起こしたりする可能性がある。そこでいま検証しているのは、浴槽のセンサーが呼吸、脈拍、体動を感知して、異常があると介護スタッフに知らせ、同時にお湯が自動的に抜けるというお風呂です。お風呂って、やっぱり一人でゆっくり入りたいじゃないですか。入浴中、介護スタッフがそばに立っているのは嫌だという方は多いんですよ。

佐藤 これは高齢者を抱える一般家庭にも普及するんじゃないですか。

遠藤 そう思います。あともうひとつ挙げるなら、自動運転車いすですね。例えば、部屋から食堂まで自動運転で行く。障害物があったらそこで止まったり避けたりして、施設内を自動走行することができます。これは移動介助の負担を大きく軽減します。現在、実証実験中です。

佐藤 いろいろなアイデアが次々と形になりつつある。

遠藤 昨年2月に「Future Care Lab in Japan」という実験施設を作りました。外部の力も借りながら、ここでICTやAI、ロボットを使って、スタッフの負荷を軽減する機器の開発や実験、検証を進めています。自動運転車いすなどもここから実用化されていくものです。いま40種類くらいの機器を実証研究しています。

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