「新型コロナ」でプロ野球が開幕延期…「損した選手」「得した選手」は一体誰だ?
新型コロナウイルスの感染拡大への防止策が求められている中、プロ野球は開幕目標を「4月24日」に設定した。当初の予定(3月20日)から1カ月以上の後ろ倒しされたことによって、関係各所で慌ただしい対応が続けられているが、最も影響を受けるのは、やはり実際にプレーする選手たちだろう。ただ、その影響は、決して一様なものではない。開幕延期で「損する選手」がいる一方、「得する選手」もいるのだ。
「成績=給料」のプロ野球選手。成績を残すためにはまず、試合に出なければならない。その意味で明らかに「得した」と言えるのは、故障離脱中の選手たちである。特に目立つのはソフトバンク勢である。
エースの千賀滉大が右前腕部の張り、昨季12勝を挙げた高橋礼が左太もも裏痛で離脱しているが、順調に回復すれば、千賀は5月末、高橋は4月頭には復帰できる可能性がある。右肘を痛めてリハビリ中の甲斐野央にとっても開幕延期は朗報だ。さらに、昨年11月に右肘を手術した武田翔太が5月中の一軍復帰に照準を合わせている。野手陣でも、柳田悠岐と内川聖一が別メニュー調整を続けていたが、着実に状態を上げている。チームを率いる工藤公康監督にとっては開幕延期を前向きに捉えることができるだろう。
「広島の佐々岡真司新監督の下で再出発を誓う野村祐輔も『得した』といえますね。2016年にリーグ最多の16勝を挙げた実績を持つ右腕ですが、過去2年間は防御率4点台と不振が続き、今季は正念場のシーズンになりますが、春季キャンプで右ふくらはぎを痛めて大きく出遅れました。ですが、3月11日に復帰登板を果たすと、同18日の2軍での練習試合で2イニングを無失点に抑え、一度は外れた開幕ローテに入る可能性も出てきたね。新生カープの船出に自身の名を連ねられるかどうかで、その後の自身の役割も変わってくるだけに、開幕延期までの期間をどう過ごすのか、大きな意味があります」(広島を取材するスポーツライター)
また、楽天・松井裕樹も開幕延期の“恩恵”を受けそうだ。今季は、不動の守護神から先発転向を図る予定だったが、3月7日のオープン戦で右手に打球が直撃するアクシデントに見舞われ、その後の調整登板を経て先発登板した同21日の練習試合でオリックスを相手に4回3失点で降板した。モデルチェンジと試行錯誤が続いている状況で、開幕延期で与えられた時間的猶予は、松井にとっては間違いなくプラスに働くはずだ。
「阪神でいえば、去年の新人王に輝いた近本光司ですね。3月16日の夜に腹痛を訴えて腸炎と診断され、翌17日から3日間にわたって静養していました。当初の開幕日だった20日にトレーニングを再開したばかりです。体重減少も伝えられていますが、開幕延期によってコンディションを再び整える時間を与えられました」(阪神の担当記者)
一方、その中で「損」と「得」の両方を感じているのが、巨人・坂本勇人である。昨季はリーグMVPの大活躍だったが、今年は自主トレ中の1月、春季キャンプ開始直後の2月と、2度もインフルエンザに罹り、調整の遅れが心配されていた。1カ月あればコンディションは上向くはずで、開幕延期で「得した選手」であろう。
「ただ、今季の坂本には史上最年少での通算2000安打達成という記録もかかっている。細かく言うと、今年の7月29日までに116本を打てば、日本記録の達成になるのだが、開幕延期によって記録更新は非常に難しくなった。本人は「そこまで意識していたものではないので、全然気にしていません」と話したというが、引退してから10年、20年が経った時に『損した』と思うことになるかも知れないですね」(巨人を取材するスポーツライター)
この坂本は特殊な例であるが、それ以外では「損した」と言えるのは、オープン戦で好調だった選手たちだろう。打撃フォームを変えて昨季のリベンジを誓っている巨人・中島宏之は、オープン戦で14試合に出場して12球団トップタイの4本塁打を放ち、打率.351で6打点。本来なら開幕していたはずの3月22日の練習試合でも、無観客の東京ドームで2打席連続タイムリーを放ち、絶好調をキープしている。ただし、好調が開幕まで続くかどうか、はなはだ疑問ではある。
今後、新型コロナウイルスの状況、そして東京五輪の日程にも影響されることになる今季のプロ野球。この「失われた1カ月」による影響は大きいが、シーズン終了後に「損した」よりも、「得した」と思える選手をどれだけ増やすことができるか。満を辞しての開幕以降、“野球の底力”が再び、問われることになりそうだ。