「コロナ相場」で私は地獄に落ちた

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ふつうの人が大損

 同じく、無謀にも荒れ相場に挑んだのは、30代の営業マンである。

 セガサミーや楽天の株に狙いを定め、3月2日から空売りと信用買いを繰り返していたそうだが、

「乱高下する相場に翻弄されて、気づけば50万円のマイナス。もうダメだ、手仕舞いにしようと後悔したのですが、次の瞬間、“もしかするとここが底値じゃないか”と思い直したんです。それで、6日に軍資金のすべてを“買い”に突っ込みました」

 その直後に地獄が待ち受けているとは知る由もなかった。

 週明け9日の日経平均株価は、米・ダウ市場で史上初めてサーキットブレーカーが発動したことを受けて大暴落。東証の主要株は総崩れとなった。

「信用取引の決済期限は半年後なので、たとえ含み損が出ても夏までにコロナが終息すれば問題ない、と必死で自分を励ましていたのですが。結局、マイナスが100万円を超えたところで堪らず損切りしました。当分、株には触りません」

 株式ジャーナリストの天海源一郎氏によれば、

「コロナ相場で最も苦しんでいるのは、コツコツ貯めたお金で信用取引をしていたふつうのサラリーマンです。そもそも、貯金がない人に株式投資はできないし、お金持ちは信用取引などしません。これだけ株価が急落すると追加の証拠金を納める必要がありますが、ふつうの人には貯金をすべて吐き出す勇気はない。となれば、どんなに安くても株を売るしかありません。結果、まじめに働いてきたサラリーマン投資家が地獄を見ることになったのです」

 相場格言に曰く、〈落ちてくるナイフは掴むな〉。“素人”の皆様は、くれぐれもコロナ相場を好機と勘違いしませぬように。(週刊新潮4月2日号掲載記事をもとに加筆・編集)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月29日掲載

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