「懲役5年」スパコン会社の顧問だった 「伊藤詩織」さん準強姦逮捕状の「山口記者」
ジャーナリスト・伊藤詩織さんへの準強姦容疑で逮捕状が出ていた山口敬之元TBSワシントン支局長。その彼が顧問を務めていたスパコン会社の創業社長が詐欺などの罪に問われていた裁判で、3月25日、判決が下った。懲役5年である。この事件・裁判を改めて検証する。
(「週刊新潮」2017年6/15、12/14、12/21、12/28、18年1/4・11、1/25各号掲載記事を再編集。年齢や肩書などはすべて掲載当時のもの)。
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人生の一発逆転には無から有を生み出すごとく、起業家として圧倒的に成功するか、ズルをする他ない。そこで手っ取り早くズルをしたのが、かねてより本誌が報じてきた「欠陥スパコン会社の公金詐取事件」当事者。東京地検特捜部に助成金詐欺容疑で逮捕されたPEZY Computing(ペジーコンピューティング)創業社長の齊藤元章容疑者(50)である。
齊藤容疑者の関連会社には、「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から35億円超の助成金、「科学技術振興機構(JST)」から60億円弱の無利子融資が注ぎ込まれている。いずれも国立の研究開発法人だ。
ハナから国のカネ頼みのスキームであり、ロマンチックなカネに魅せられた者たちは舞台装置作りに余念がなかった。重要な役割を演じたのが、他ならぬ総理ベッタリ記者こと、山口敬之元TBSワシントン支局長(51)。伊藤詩織さん(28)への準強姦容疑で逮捕状が出ていた人物であり、ペジー社の顧問という顔もある。
「今回の捜査の過程で、顧問料200万円、そして家賃として200万円が、齊藤から山口に毎月支払われていることがわかりました」と、社会部デスク。家賃とは東京・永田町の「ザ・キャピトルホテル東急」内の「レジデンス」使用料だ。戸数はわずか14で200万円の部屋も実際に存在し、広さは約239平方メートルにもなる。
出入り口のある16階はゲストルームで中の階段を下りた15階がメインルームだ。北から西へ大きく開かれた窓からは日枝神社、国会議事堂。40畳のリビング、18畳の寝室、冷蔵庫や食洗機付キッチン、洗濯乾燥機が置かれたバスルーム。ハウスキーパーによる週2回の無料清掃、サロンにスパ&フィットネス。一介の記者が、スパコン会社顧問が、毎月家賃として200万円の支給を受ける真っ当な理由など、そうあるものではない。
「カネ集めの舞台装置ですよ。国家権力を睥睨するロケーション、安倍・麻生との蜜月を描いた山口自身の著書『総理』。これを武器に、“錬金術”に勤しんでいた様子が窺えます」(同)
結果、前述の国からの100億円に加え、民間から200億円ほどを調達することに成功していたという。
齊藤社長はこんなセールストークを展開していた。
〈人工知能が進化してそれが人類を超える点(シンギュラリティ)が来る。スパコンさえあれば衣食住はタダ、カネは不要、犯罪も事故もない、少子高齢化問題やエネルギー枯渇の懸念が解決される社会が実現する〉
「齊藤や山口は2人揃って、あるいは各自で、人脈を辿ってスパコンの売り込みに力を入れていた。例えばスパコンは暗号通貨の“採掘”作業に使えたりするので、齊藤はそんなことを手掛けている会社にもプレゼンして回っていたね」
と、ベンチャー関係者。
「実は……」と、永田町関係者が、こんな打ち明け話をする。
「山口は自身が使用する携帯電話を、検察に対して任意で提出したようです。齊藤が逮捕されたのが昨年の12月5日で、起訴が25日。その間のことだと聞いていますが、当局としては山口に、“あなたの逮捕はないから”と匂わせたうえで、『協力者』に仕立てる算段があったのではないでしょうか」
ITジャーナリストの井上トシユキ氏に尋ねると、
「そもそも、警察や検察といった捜査機関は、ドコモやソフトバンク、auといった携帯電話会社に加え、LINEなどの通信アプリ会社に対して、“捜査にご協力を”と言って、容疑者の通話履歴やメールなどの送受信履歴を提出させることが可能です」
これを捜査関係事項照会と呼ぶ。
「そのため、通話やメールの履歴を見たいだけなら、わざわざ携帯を提出してもらう必要はないのです。ではなぜそうしたのか。1つめはブラフというかプレッシャーをかけること。2つめはそこに残された写真を見るため。撮影していてもそれを誰かに送っていなければ、たとえ電話会社に依頼しても手に入れられませんから。電話帳のデータも同様ですね」(同)
そして3つめは、少し入り組んだ形なのだが、
「相違点を見出す、とでも申しましょうか。通話などの履歴を事前に取り寄せておく。そこで携帯を提出させる。その際に相手は『危ないメッセージ』を消去する可能性がある。元のデータと照合し、どれを消したのかを把握することで、何が重要か、秘密にしたい事柄かが自然と見えてくる。ちなみに、提出前に写真やメールを削除したとしても、携帯の筐体を壊すことなく、民間の会社でもほとんどのデータが復元可能。もちろん、特捜部でも同じです」(同)
東京地検で検事を務めた落合洋司弁護士は、
「携帯電話に限らず、捜査に必要があれば所持品について、任意で提出を受けること自体、おかしな話ではありません。ただ、当局がそこまでするのは被疑者や被疑者に近い立場の人であることが多い。単なる参考人にはそこまでしないのではないでしょうか。当然、携帯の提出を受けてパソコンはそうしていないということは考え難いですね」
としたうえで、特捜部の思惑をこう斟酌する。
「メールや写真から活動状況や行動内容を知ることができます。携帯電話の任意提出を受けたということは、その人物の深い部分の情報に対し、検察が興味・関心を持っていることの証左。すべての参考人から携帯電話の任意提出を受けるわけではありませんから」
特捜部に逮捕されて携帯を没収された経験を持つ人物に当時を振り返ってもらった。
「私の場合、携帯から問題が露見することはありませんでした。ただ、当時、複数の相手と交際しておりまして、“あんた、ちょっとぐらい休んだらどうなの”って、検事さんに腕をツネられた記憶があります」
なるほど、当局にとって副産物に巡り合う可能性がないわけではないのだ。