「コロナ禍」で高まる日本版CDCを望む声 まずは危機管理の人材育成から始めよ
東日本大震災から9年――。日本は再び未曽有の国難に見舞われています。その間にも、集中豪雨による洪水や、巨大台風の襲来に見舞われてきましたが、残念ながら時の政府(当時の民主党や、現在の自民党)の危機管理は、国民から支持されるレベルにはありません。
いま巷では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、感染症の危機管理に注目が集まり、日本版CDC(疾病対策センター)の設立を望む声が高まっています。しかし、簡単なことではありません。米国のCDCは、戦地のマラリア対策の延長として、第二次世界大戦直後に設立された組織。すなわち、日本の国立感染症研究所のような研究機能だけでなく、軍事をベースにした危機管理機能を併せ持っているのです。ですから、日本で同様の組織を作ろうとしても、人員や予算を増加するだけでは到底、実効性はおぼつかないのです。
前提として必要とされるのは、国内に危機管理の分かる人材を増やすこと。そのためには、教える側の“人材”と“機会”を確保しなければなりません。具体案としては、大学の専門課程(3~4年)において、危機管理の講座を開設することから始める。いずれ学科や学部に昇格することを前提として、です。日本の現役世代には、実際に戦場に赴いた戦士はいませんが、企業で戦ってきた戦士は沢山います。ノロウイルスやクレーマーなどの難敵と対峙して貴重な経験を積んだ彼らは、しかし、危機管理がしっかりと身についた頃にリタイアしてしまいます。宝の持ち腐れの状態です。彼らを採用すれば“教える”人材は見つかるはず。あとは、“機会”を設けるだけです。
では、具体的に何をどう教えるべきなのか?
第一に重要なのは、基本的な危機管理の理論やノウハウです。たとえば、文章を作成する時には、起承転結という構成の順序があります。同じように、危機管理には「感知・解析・解毒・再生」という概念が有効であると、弊社では常に企業にアドバイスをしています。これが謝罪の局面なら「反省・後悔・懺悔・贖罪」という手順があります。他に、やってはいけない10種の謝罪なども。
別の順序や、もっと優れた理論やノウハウも多くのコンサルタントの方々がお持ちでしょう。それを教えるのです。弊社で作成した危機管理の解説本(非売品)の中には、1冊の本になる数(269頁)の理論やノウハウが組み込まれています。私は今、それを元に女子大で教鞭を執っています。『事件と広報』(エフシージー総合研究所)という新聞記者が書かれた危機管理の事例集には、さらに多く(約400頁)のノウハウが詰め込まれています。元新聞記者の皆さんなども、危機管理を教える存在として適任ではないでしょうか。
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