故・八千草薫さん、3億円豪邸を恩人に寄贈していた マネ語る“見事なる終活”

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家を残したい

「ご主人との思い出も詰まっていますし、本人の希望は“家を残したい”ということでした。彼女は記念館とかは絶対に嫌よ、と言っていました。自分は文化人ではないし、所詮、“役者風情”だって。レストランにして残そう、という話もでた。ただ、経営の素人がやっても上手くいきそうにない。次に、世田谷区に寄贈しようともした。でも、実際に私が区に相談すると“更地なら”という返事でした」

 結局、家を残すという選択肢は断念せざるを得なかった。原田氏が続ける。

「それなら一番迷惑のかからない方法でお世話になった方たちに分け与えようということになったんです」

 八千草の自宅の登記簿を見ると、今年2月、3人の男女に遺贈の手続きがされていることが分かる。遺贈なら、法定相続人でない人へも財産を遺すことが可能だ。

「3人のうちお二人は八千草とご主人の谷口さんのそれぞれの遠戚。2人とも自宅に出入りされて、一緒に旅行するほど親しくされていた方です。もう1人は所属する事務所の社長。病気になって仕事をすべてお断りしたことを彼女はとても悔やんでいた。損害を与えてしまった、と」

 そうはいっても相続税はかかることになる。

 相続に詳しい税理士は、

「遺贈は通常の相続よりも2割加算された額を相続税として支払うことになります。この場合、お一人あたり、2500万円弱を納めることになるのでは」

 原田氏によれば、現在、八千草邸の買い手を探していて、今後、売却して各々が相続税を払う方向。それでも3人の手元に現金は残るので、お世話になった方に少しでも恩を返せればということなのだろう。実に見事な「終活」ではないか。

「彼女の愛犬も愛猫も引き取り手が決まり、今は遺品の整理を進めているところです。この庭を気に入って買ってくれる方がいればいいのですが……」(原田氏)

 80坪ほどの庭には桜や金木犀が植えられ、小鳥のさえずりも聞こえてくる。

「あと何回この桜が見られるかしら」

 晩年の八千草はそう言って、後のことを思案していたという。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

ワイド特集「人生の幕」より

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