コロナで一斉休校はアリなんだけど…(中川淳一郎)

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 安倍晋三首相が全国一斉休校要請をしましたが、困惑や反発の声が上がりましたね。子供達の卒業式の思い出はどうなるのか、働く親はどうすればいいのか、給食を栄養源にしているのに……など。まぁ~、この間の安倍氏と政府の説明はヘタクソ過ぎましたね。情報発信の勉強しろよ。

 安倍氏は「思い出をつくるこの時期に、学校を休みとする措置を講じるのは断腸の思い。学校が休みとなることで、親御さんにはご負担をおかけする」と述べたうえで、この間、学校に子供達や教職員が集まることの感染リスクについても述べました。

 正直、新型コロナが2003年のSARSや2009年の新型インフルよりも危険なのかはよく分かりませんが、世界的なパニックぶりが両方を上回っているのは間違いありません。

 SARSと新型インフルの時に、東日本大震災で起きたようなトイレットペーパーやインスタント食品買い占めなどの騒動を見せてテレビが危機感を煽ったかといえば、そんなことはない。「よく分からない」からこそ、ここまでパニックになっている。

 だったら、経済活動を営むわけではない学校を全部休校にするのは「アリ」だと思います。3月上旬から休みになって、卒業式がなくなっても、学校時代の思い出って完全に毀損されますかね?

 子供ってあたりかまわず触りまくるし、周りを気にせず咳はするし、予防意識は大人ほど高くない。「インフルエンザで学級・学校閉鎖」はよく聞きますが、「インフルで職場閉鎖」「インフルでイベント中止」は聞いたことがない。これは大人がより予防意識をもって対応しているからですし、経済活動を停滞させる方が問題が大きいと考えているからです。だったら学校閉鎖の方が合理的だし、過去に「閉鎖」を経験している学校の方が、家庭も含め、“慣れ”の面では対応力は高い。あとは親御さんの職場の理解が進むことこそ重要です。

 前倒しの休みは親子にとって本当に気の毒ですが、社会全体の最適を考えたら子供達を休みにするのはマシな措置だったのでは。あと、感染してしまった児童・生徒はその後「コロナ野郎」「汚染迷惑バカ」などといじめの被害に遭うかもしれません。子供ってそこまで残酷なんですよ。

 それにしても安倍氏についていつも思うのは、説明のヘタクソさです。滑舌の悪さは仕方ありません。でも、役人が作ったペーパーを基に喋るから感情がこもっていないうえに、近年の無茶苦茶な閣議決定の説明には論理的矛盾が目立つ。何かを言いきっても、東京五輪誘致時に「原発はアンダーコントロールにある」とウソをついたりした時の印象が強すぎる。今回、国民を納得させるにはこんな感じのことを言えば良かったと思うんですよ。

「一斉休校の理由は、国全体の被害減少のためにまず取れる手だからです。子供達にウイルス感染に慎重な行動を求めるのは酷ですし、感染しても重篤化しにくいとはいえ、リスクは避けねばなりません。勉強が遅れる? これを機に自習の習慣をつけたり、興味あることの才能を伸ばして下さい。大人は、その間頑張って経済をまわしましょう。今は国難なんです」

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

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