【名古屋闇サイト殺人事件】「事件について何も思いません」犯人から届いた非情な手紙
利恵さんが遺した「2960」の意味
「さて事件について、何を思うかという質問については、何も思いません。『闇サイト殺人事件』は既に終わった事件で、12年も経過しているのですよ。今更に事件を振り返ったり、後悔したりしてみたところで彼女は戻って来ないのです。今の私に出来るのは、前述した通り、彼女の冥福を祈る事と、贖罪に努める事と彼女からの報復を生涯背負い続けていく事なのです」
これは、2007年8月に起こった「名古屋闇サイト殺人事件」の実行犯の一人、川岸健治(かわぎしけんじ)(無期懲役・服役中)が寄せた手紙である。
この事件は、インターネット上で非合法の職をあっせんする「闇サイト」を媒介に集まった見ず知らずの3人の男が、一面識もない磯谷利恵(いそがいりえ)さん(当時31)を帰宅途中に拉致、暴行・脅迫を加えてキャッシュカードの暗証番号を聞きだした後、さらに暴行を加えて殺害、遺体を山中に遺棄した、というものだった。
事件の凄惨さはもちろん、犯行が無計画かつ短絡的であることに加え、ネット社会の闇の部分を映し出した点に注目が集まり、大きく報道された。
川岸のほかに逮捕されたのは、神田司(かんだつかさ)(死刑確定・2015年6月執行)と、堀慶末(ほりよしとも)。この堀は、逮捕後に別の強盗殺人事件が発覚し再逮捕され、2019年7月19日、最高裁判所の決定により、死刑判決が確定することになる。
非業の死を遂げた利恵さんの無念を晴らすため、最高裁決定までの12年間に亘って裁判や、講演活動で戦い続けてきた母親の磯谷富美子(いそがいふみこ)さんに密着してきたのは、NHK「事件の涙」取材班だった。取材班は「加害者たちの12年」も取材。その成果をまとめた『娘を奪われたあの日から―名古屋闇サイト殺人事件・遺族の12年―』(新潮社)には、冒頭で紹介した犯人の一人である川岸との手紙のやり取りの詳細が報じられている。(以下「 」内、川岸の発言は同書より抜粋、引用)。
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