「コロナばらまき男」を愛知県警が捜査開始 意外に高い“逮捕、起訴のハードル”

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威力業務妨害罪を視野と報道

 遂に司直の手が伸びる――。東京地検特捜部が政界にメスをいれたわけではないが、世論の関心は極めて高い。あの“コロナウイルスばらまくぞ男”に対し、愛知県警が捜査を開始すると報じられたのだ。

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 YAHOO!ニュースのトピック欄は3月13日の朝、時事通信が配信した「コロナ『ばらまく』男性捜査へ 飲食店の従業員感染 愛知県警」の記事を掲載した。要点を列挙させていただく。

◆愛知県蒲郡市の男(57)は3月4日の夕方に検査で新型コロナウイルス陽性が判明した。

◆保健所が自宅待機を要請したが、男は外出。「菌をばらまく」などと発言していた。

◆男は市内の居酒屋とパブに立ち寄った。パブでは従業員の女性と密着し、肩を組んで歌うなどした。

◆パブ従業員で30代のフィリピン人女性のウイルス陽性が12日確認された。

◆事態を重く見た愛知県警は、威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進める方針を固めた。

 NHKも同日、「NHKニュース7」(総合・19:00)でパブが被害届を出したことを伝えた。ニューズバリューを重く見たことが分かる。(註:NHK NEWS WEBで「“ウイルスうつす”と話し飲食店へ 店側『営業妨害』で被害届」と配信)。

 これらの報道に、ネット上では強い反応があった。ツイッターから一部をご紹介する。

《頼むから、蒲郡のコロナばらまき男を懲らしめてくれ~》

《蒲郡の新型コロナウイルス感染発覚後に飲食店に行き、ウイルスを故意にばら撒き別の人に感染させた男の捜査に愛知県警が乗り出した件、支持する。当然》

《蒲郡のコロナ撒き散らし男の捜査がやっと始まったらしい。バイオテロだし当時その場にいた人の心身のダメージ半端ないと思うし早く捕まえてそれなりの刑罰与えて欲しい》(註:改行を省略した)

 時事通信は《威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進める》と報じたが、元東京地検特捜部副部長で前衆院議員の若狭勝弁護士(63)も「それが最も現実的だと思います」と指摘する。

「威力業務妨害罪は、たとえ来店した男性が陰性だったとしても、罪が成立する可能性があるためです。店内で『俺は新型コロナに感染している。お前たちを感染させてやる』と嘘をつくだけで、逃げる人は多いでしょう。売上が減少したり、何日も閉店する必要が生じたりしたら、店の業務を妨害したと言えます。まして男性は、実際に陽性だったわけですから、業務を妨害した可能性はより高まるわけです」

 しかし若狭弁護士は1点、気になるところがあるという。「当日のパブ店内で撮影された動画も見たのですが、問題の男性は、それほど暴れていませんでした」と振り返る。

「大声で『陽性だぞ』と暴れたり、唾を周囲に撒き散らしていたりしたら、『威力』業務妨害罪が成立すると思います。しかし、少なくとも動画を見た限りは普通の客でした。そのため偽計業務妨害罪で捜査する可能性もあると思います。威力でも偽計でも、刑法は『3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する』と定めています」

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