ドラえもん“土曜引っ越し”の悪影響 映画特番が惨敗でテレビ朝日は真っ青?
「名探偵コナン」と明暗
ドラえもんが不振と聞けば、反射的に「少子高齢化」という言葉が浮かぶ向きもあるだろう。だが、前出の民放関係者は少子化説を否定する。
「ドラえもんは、『クレヨンしんちゃん』とセットで、2005年から金曜午後7時から放送されていました。1983年の2月11日に放送された回は視聴率が31・2%を記録。ビデオリサーチの公式サイトではアニメの歴代視聴率で9位です。ところが昨年、テレビ朝日はクレヨンしんちゃんを土曜の午後4時半、ドラえもんを午後5時に移しました。子供たちの視聴習慣が壊れ、両番組の視聴率は低下しました。この結果、子供たちはドラえもんへの関心が低下してしまい、特番の視聴率も低迷したのではないでしょうか」
ビデオリサーチの視聴率は2015年まで遡れることは、前に指摘した通りだ。これを使い、15年から現在までの視聴率を比較することにした。
テレビ朝日のドラえもんとクレヨンしんちゃん、そしてライバルにあたる「名探偵コナン」(読売テレビ制作/日本テレビ系列・土曜・18:00)と、アニメでは視聴率トップを誇る「サザエさん」(フジテレビ系列・日曜・18:30)と比較することにした。
ちなみに、名探偵コナンは1996年の放送開始から2009年3月まで午後7時か7時半に放送されていた。それが同年4月に土曜の午後6時半に“引っ越し”となった。ドラえもんやクレヨンしんちゃんと同じ歴史を持っているわけだ。
それでは、折れ線グラフをご覧いただこう。4番組のうち1番組でも、特番で放送時間が延びたり、他の特番の影響で放送休止となったりした場合は、データに含まなかった。
グラフの右端は今年2月29日の視聴率を示している。最も高い黄色はサザエさんで11・7%、2番目の赤色は名探偵コナンで5・9%、3番目の緑色はドラえもんで4・0%、4番目の白色はクレヨンしんちゃんで3・5%となっている。
折れ線グラフを見ると、2015年から一貫してサザエさんが強いことが印象的だ。しかしながら、グラフの中央を見ていただきたい。
赤色の名探偵コナンが低迷。白のクレヨンしんちゃんと緑のドラえもんが、黄色のサザエさんに肉薄している時期もあったことが分かる。
具体的な数字を見ていただこう。例えば15年の8月下旬、サザエさんは8・8%と振るわなかった。しかしドラえもんは8・3%、クレヨンしんちゃんは7・8%を記録し、名探偵コナンは6・3%だったのだ。
17年夏も似た状況だった。つまりドラえもんとクレヨンしんちゃんの引っ越し前は、3番組は視聴率で激しいデッドヒートを繰り広げていたのだ。
往時は30%あったドラえもんの視聴率が、8%台に下落したのは少子化の影響だろう。だが8%あった視聴率が4%になったのは、“引っ越し”が原因と見て間違いない。
今度はグラフの右端を見ていただこう。特に緑の折れ線が急落しているのが分かる。これこそが、ドラえもんの視聴率が引っ越しによって落ち込んだことを示している。
「今、テレビ朝日さんの金曜夜は、午後7時から『ザワつく!金曜日』、午後8時から『マツコ&有吉 かりそめ天国』を放送しています。2番組とも2桁の視聴率を取ることがあり、アニメ2番組を土曜に引っ越しさせたことは、金曜のゴールデンという枠だけで考えれば成功なのかもしれません。ただし、ドラえもんの映画特番が視聴率で惨敗したのはテレビ朝日さんにとっては予想外だったはずですし、この状況に真っ青になっているかもしれません」(同・民放関係者)
ドラえもんの映画版は、巨額の興行収入で知られる。「月面探査記」の50・2億円は前に紹介したが、18年の「ドラえもん のび太の宝島」[今井一暁監督]は53・7億円、17年「ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」[高橋敦史監督]は44・3億円――という具合だ。
「ドラえもんの視聴習慣が消滅し、土曜のレギュラー放送の視聴率が不振となった。映画版を放送した特番も視聴率が低迷。そうなれば誰だって、『次はドラえもんの映画版で興行収入が下落してしまうのではないか』と不安視すると思います。テレ朝は金曜夜という目先の視聴率だけにとらわれ、ドラえもん映画版というドル箱を失おうとしている可能性があります。ドラえもんとクレヨンしんちゃんの視聴率を回復させないと、それこそテレビ朝日さんの収益や株価に悪影響が出てもおかしくないでしょう」(同)
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