高橋理事の五輪延期発言 NBCテレビの意向を“忖度” 放言ではなく観測気球という声

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第1回は4月開催!

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之理事(75)の発言が、大きな波紋を呼んでいる。今年7月に開催予定の東京オリンピックに対し、「1、2年の延期が現実的な選択」との考えを示したからだ。

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 高橋理事が取材に応じたのは、アメリカのウォールストリート・ジャーナル、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、共同通信などだ。

「個人的見解」と断っている記事もあるが、これだけ重要な発言を、日米を代表するメディアに向かって、何の意図もなく語ったとは考えにくい。

 それどころか、朝日新聞(電子版)が3月11日に報じた「オリンピック『1~2年延期案考えるべき』 組織委理事」によると、高橋理事は《他の国際的スポーツイベントの日程が埋まっていることから、「そのすき間をぬって2年後の夏が一番可能性がある」》と極めて具体的な発言をしている。

 高橋氏は元電通の専務であり、海外の巨大スポーツビジネスに精通し、人脈も豊富とされる。匿名コメントではなく、堂々と実名で応じているのだ。何らかの“観測気球”を上げたと見られても仕方ないだろう。

 大会組織委の森喜朗会長は(82)は「計画を変えることは考えていない」と否定。高橋理事の発言を「率直に申し上げて、とんでもないことをおっしゃったなというのが正直な感想」と批判した。

 更に森会長は、高橋理事から「口が滑ってしまった。お詫びしたい」という内容の謝罪があったと、記者団に対して明らかにした。森会長の発言通りなら、高橋理事は平身低頭しているはずだが、「額面通りに受け止められない」という指摘もある。

 そこで高橋理事の爆弾発言を改めて精査してみる。まず、なぜ中止の選択肢を排除したのか、各紙が報じた高橋理事の説明をご覧いただこう(註:引用に際してはデイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。

《大会中止の可能性は「あり得ない。放映権料などが入らなくなった場合、国際オリンピック委員会(IOC)の財政が危うくなる」と話した》――朝日新聞3月12日「東京五輪『1~2年の延期プランも考えなければ』 組織委理事『個人的見解』」

《IOCには米テレビ局が巨額の放送権料を支払っている事情を踏まえ、高橋氏は「中止はない」と明言》――共同通信3月11日「五輪組織委の理事、延期を提起へ 『中止はない』1年か2年後も」

 またウォールストリート・ジャーナルの報道を伝えた産経新聞の記事も、該当部分をご紹介する。

《中止か無観客で実施すれば経済的損失が大きいと指摘した》――産経新聞3月12日「五輪『予定通り』 理事『延期』発言に森会長が反論」

 とにかく中止はできないようだが、ここで、ある疑問が浮かぶ。東京オリンピックの開催期間は7月24日から8月9日だ。なぜ1年後や2年後の夏にこだわったのだろうか。

 なぜ7月24日から3か月後の10月24日とか、半年後の21年1月24日と言わなかったのか。

 特に日本人は、夏開催に疑問視する声は少なくなかった。オリンピック問題を取材している記者が指摘する。

「新型コロナの状況を考えると、オリンピックの中止や延期をやむなしと考えている日本人は決して少なくないはずです。中止はともかくとして、『前回の東京オリンピックのように10月に開催してほしい』という延期願望を持つ日本人は、潜在的な数を含めると相当な数に上るのではないでしょうか」

 極端なことを言えば、冬の開催を歓迎する関係者だっているに違いない。マラソンやサッカーは、夏より冬が嬉しいに決まっている。水泳や体操、柔道といった日本の人気種目は、室内競技なので影響は少ない。

「2024年のパリオリンピックは、競技に適した波が来る海岸がないことから、サーフィンは南太平洋にあるフランス領ポリネシアのタヒチ島で実施すると発表されました。こんな会場設営が認められるのなら、東京オリンピックを冬に開催し、温暖な気候が必要な競技は競技場を沖縄に設置しても“東京オリンピック”と言いつのることが可能になります」(同・記者)

 歴史を振り返れば、オリンピックの開催時期はバラバラと言っていい。栄えある近代オリンピックの第1回は1986年にアテネで開催されたが、開幕式は何と4月6日であり、閉幕式は15日だった。

 南半球での開催時は、当然ながら半年ずれた。史上初めて南半球の開催となった、1956年のメルボルンオリンピックは11月22日から12月8日。2000年のシドニーオリンピックも9月15日から10月1日にかけて開かれた。

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