命がけで守るのは妻か自分のプライドか? 立川志らくの弁明に見る「嫌われたくない」小心さ

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ことあるごとに「18歳年下の妻」 志らくの行動原理に見る深読み傾向と「嫌われたくない」小心さ

 自身が顔を務める「グッとラック!」では、「うちのカミさんは18歳年下でファンキーおかみと言われているので、お酒飲むとわけわからなくなっちゃう」と説明。といってもその妻は38歳。社会的にみて分別のつかない年齢ではない。そもそも年齢とファンキーさと酒グセの悪さとの間に、何の因果関係もないだろう。けれども、この騒動前に他の番組に出ていた時も、志らくは「18歳年下」を連発してきた。それだけ年若い妻をもらった優越感、そして、妻への強い愛情というか執着心をも感じさせた。

 ちなみに志らくの私服は妻がコーディネートし、全身「ヒステリックグラマー」だそうだ。「しまむら」でいいと思っているが、妻が好きなブランドだから着せられているとこぼしていた。愛する妻にされるがまま、派手な私服に身を包む。弟子にキスやハグをしていたのは酔っていたからという言葉を信じる。それは好きな相手の言うことには、とことん黙って従うのが愛なんだ、と信じているからではないだろうか。

 その思想は弟子との関係にも見える。東京の落語界で最多の弟子がいると豪語する志らくいわく、「師匠と弟子は恋愛感情に近い」という。芸や生き様に惚れ込んで、そばにいたいと弟子入りするもの。だから「倒れるほど気を遣え」と自身も師匠の立川談志に言われてきたそうだ。そんな志らくはかつて、主宰する劇団の稽古を誰も見にこなかったと腹を立て、二ツ目の弟子全員を期限付きで降格させて物議を醸した。今日は弟子が来るかなと毎日待っていたのに、と恨み節をこぼし、弟子たるもの師匠に興味を持つべきと断じた。弟子に不満を漏らしたのはこれだけではない。彼らが思い思いの「お中元」を志らくに贈る「お中元の会」が催される様子が以前放送された時、「ぎっくり腰なのに、前座は重たいものばかり持ってきて気が利かない」と語っていた。

 妻には黙って従い、弟子には言わずとも通じる気遣いを求める。志らく自身は何も言わず、相手の反応で愛情を測り続ける。口にするのは野暮ということだろう。でも、深読みが前提の関係は気疲れするに違いない。一昨年には審査員を務めた「M-1」後、かまいたちにツイッターをブロックされ、「僕のことを嫌いにならないで」と訴えていた。言葉を伴わない行動を、勘ぐりすぎる性格なのではないだろうか。

 今回の「こんなこと大したことではない」と言わんばかりの態度も、妻や弟子、そして世間にも深読みを求めているように感じる。「嫌いにならないで。馬鹿にしないで。余計な口出しはしないで見守って」と。ただ思う、彼らの愛情を試しながら生きる小心さこそが繊細な感性や愚直さを生み、彼を名落語家たらしめているのだろうと。志らくが誇るような、年下妻や弟子の多さが彼を彼たらしめているわけではないのだと。

(冨士海ネコ)

2020年3月12日掲載

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